ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2780)

クローズアップ現代「広がる波紋 遺伝子組み換え動物」覚書

 NHKのクローズアップ現代「広がる波紋 遺伝子組み換え動物」(11月25日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 観賞用のメダカや熱帯魚、動物アレルギーの人でも飼えるようにした犬や猫。既にアメリカでは、遺伝子組み換え動物の普及が急速に進んでいる。

 猫アレルギーのエレン・リンデマンさん。10か月前にアレルギーを出さない遺伝子組み換え猫を70万円で購入。曰く「夫も息子もアレルギーの症状が出なくなったんです。本当に感謝してるわ」。

 遺伝子組み換えネコを販売している会社は、どのような遺伝子を組み込んだかは、企業秘密としている。日本でも5匹の遺伝子組み換えネコが飼われている。

 アメリカは、生態系に悪影響を与えることを禁ずるカルタヘナ議定書に加盟していない。

 遺伝子組み換えサケ。通常の3倍速で成長し、大きさも2倍になる。

 遺伝子組み換え技術開発会社のデビット・エドワーズ博士曰く「早く成長すれば、それだけ餌は少なくて済みます。少ない資源で食品が生産できるような応用は、確実に人類のためになる技術です。」

 今年9月、遺伝子組み換えサケについて、アメリカ食品医薬品局で公聴会が開かれた。アメリカ政府は、技術を尊重し、従来の食品と比べ特に悪い点が証明されなければ、承認するという姿勢。遺伝子組み換えサケにも「問題なし」というお墨付きを与えた。

 遺伝子組み換えサケは、早ければ12月にも店頭に並ぶ。

 現在は、遺伝子組み換えであることを表示するか否かの是非が議論されている。

 消費者団体副代表パティ・ロベラさん曰く「遺伝子組み換えサケを市場に出すなら、せめて政府は、表示を義務付けるべきです。消費者が選択できるようにしてほしいのです。」

 マレーシア。遺伝子を組み替えたネッタイシマ蚊のオスを屋外に放つ計画が持ち上がっている。この雄の蚊と雌の間に生まれた子供は、幼虫のうちに死ぬように遺伝子が組みかえられている。屋外に放つことを繰り返すことで、いずれは絶滅すると考えられている。

 デング熱が発生し、今年も100人以上がなくなっているため。これまで殺虫剤などで蚊の駆除を試みてきたが、ほとんど効果がなかった。

 とはいえ、遺伝子組み換えの蚊を放つ実験の候補地とされた街では反対の声が上がっている。反対者曰く「蚊は生き物なので、何かまずいことが起こっても回収できません。どんな結果を生むか分からないのですから、自然にはなつべきではありません。」

 マレーシア政府は人体や環境への悪影響はないとして、蚊を放つ計画だ。

 マレーシアのリョウ・ティオンライ保険相曰く「政府としては遺伝子組み換え蚊の放出を繰り返すことで、デング熱の被害を断つことができると期待しています」

 この計画にはWTOも注目している。今回のケースが上手くいけば、インドやブラジルなど、デング熱に悩む地域にも情報を提供していきたいとしている。

 WTO西太平洋事務局チャン・モーセン博士曰く「遺伝子組み換え技術はこれからも進歩していきます。わたしたちはそれを受け入れ、この最新技術を使いこなしていくべきなのです。」

 番組にゲストで呼ばれた平川秀幸(大阪大学準教授)。マレーシアの遺伝子組み換え蚊に関して曰く「蚊を食べている他の生物への影響等がどこまで計られているか、気になるところです」

 今年5月、世界を震撼させる発表を行ったクレイグ・ベンター博士(3年前、ヒトの全ての遺伝子を解読し、億万長者になった)。

 曰く「今日集まってもらったのは、初めて生物を人工的に作り出すことに成功したからです。コンピュータを使って、すべての遺伝子を設計したのです」

 遺伝子組み換えサケの場合、人間が操作する遺伝子情報は1万分の1だが、ベンター博士は百万を超える遺伝子の部品をすべてコンピュータで設計した。その遺伝子を別の細胞の膜の中に注入すると、分裂して増殖することが確認された。

 この技術を用いれば、思いどおりの生物を設計することができるという。

 次々と作りだされる人工生物に、さすがにアメリカでも戸惑いが広がっている。現状では、人工生命を作り出すことに対する規制が何もない。

 生命倫理学者のアレン・ブキャナン氏(デューク大学教授)曰く「生物兵器を使ったテロの危険を心配しています。自然界に存在するよりも、さらに危険な病原体が作り出されるかもしれません。」

 遺伝子合成会社には、炭疽菌、エボラウィルス、ボツリヌス菌などと同じ遺伝子の作成依頼が舞い込むこともある。

 遺伝子合成会社のクラエス・グスタフマン氏曰く「あらゆる技術には善と悪の両面があります。ハンマーで家を建てることもできれば、人を殺すこともできます。それが社会であり、市場経済なのです。」

 山田宏哉記

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 2010.11.27 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ