ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2784)

 追跡!AtoZ「向精神薬 乱用の実態」覚書

 NHK追跡!AtoZ「“心の病”の薬に何が〜向精神薬 乱用の実態」(11月27日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 現在、向精神薬を(睡眠剤、抗鬱剤、精神安定剤など)を乱用する患者が急増している。国内の市場規模はこの10年で2倍になった。

 向精神薬は中枢神経に作用する。大量に服用すると、健康に深刻な影響を及ぼす。

 北海道で向精神薬をネットで密売して逮捕された女性(39歳)。"病院回り"をして、それぞれの病院で薬を処方してもらいネットで転売。1シート\230の薬を、1シート\2400で販売し、総額250万円を荒稼ぎしていた。

 診察にあたった医師曰く「ぼーっとしたような人でしたよ。不眠というので睡眠剤を出したんです」。他の病院でも薬を貰っていたことに気付かなかったという。

 ネットで睡眠薬などを買う20代後半の会社員曰く「楽しみたい時とか、ぶっ飛びたい時とかいつもと違う感覚になりますね。音楽が入ってきやすいという子もあいれば、酔ったようになる子もいれば。僕はテンションあがってきますね」

「メールで問い合わせをして、ネットで買います。病院に行ってカルテが残るのは嫌だし、病院に行く時間とか考えたら、安いもんなんで」

 群馬県赤城高原ホスピタル。薬物依存が専門の病院。日常生活が送れなくなった人たちが20人ほどが入院している。

 入院している30代男性会社員曰く「10ヶ月くらいほとんど休みなしで働いて、仕事のストレスと、ちょっと寝れなくなってきたので睡眠薬を貰ったりして、始めは1錠から始まったんですけど、また同じ症状が出てきて。それを訴えるたびに薬が増えていった感じですね。」

 同じく入院するふたりの子供を持つ女性(29歳)。子育てに悩んだのをキッカケに薬を飲み始め、だんだん止められなくなった。

 曰く「楽になりたい気持ちでだんだん量が増えていって、240錠くらい飲んだことがあるんですけど、ぼーっとした状態でどんどんおかしくなると、日常生活がもうどうしようもなくなってきて。」

 こうして身体が動かない日が続き、育児もできなくなった。無意識のうちに自殺未遂を繰り返し、子どもを施設に預けざるを得なくなった。

 曰く「精神安定剤が24時間入っているわけだから、善悪の判断も出来ていなかったし、大量服薬は良くないと思っていたんですけど、それをやめようという気はなかったですし、どんどん落ちていきました。」

 群馬県赤城高原ホスピタルの竹村道夫院長曰く「今は街中でも精神科のクリニックがたくさんあって、簡単に行ける。簡単に相談できるのはいいことだけど、処方薬乱用、処方薬依存症という病気があるという認識が、患者さんと医師に必要だと思います。」

 番組に出演した匿名の病院事務長曰く「"薬だけ下さい""こんな薬が欲しい"と言う方もたくさんいる。つかんだ患者さん、平たく言えばお客様。離さないようにするには、希望通り処方する。」

「かなりきつい向精神薬には、副作用もあると思うんですけど、患者さんが希望されたら、出さざるを得なくなる。ひとつのビジネスとしてやる限りは、収益をあげなきゃいけない。」

 一方、密売ルートは拡大する。番組では地名が伏せられていたが、おそらく大阪の釜ヶ崎。生活保護の人が露店にバンバン売りに来る。生活保護の受給者は医療費が無料なので、転売用の向精神薬を無料で仕入れることができる。

 番組には、生活保護者に病院を回らせ、向精神薬を入手させていた元ヤクザが登場。

 曰く「生活保護を受けている人間は(向精神薬を)タダでもらえるから、そんな人間にちょっと声かけて、"おっさん、病院行って薬貰ってきてくれ"と。彼らに日当やって、生活保護受けてる人間は山ほどいるので、ネットワークは出来上がってる。

「10人〜20人集まるようになるから、すぐに1000錠、2000錠は簡単に集まる。大量に仕入れたものを欲しい人間に高く売る。一回で数百万儲かるね。」

 狙うのは安易に薬を処方する病院。病気を装う演技指導までしていたという。製薬会社の名前や貰う薬名まで指定する

 元ヤクザ、続けて曰く「医者の所に行って、『幻覚が見えます、幻聴が見えます』って。たまには『わー!』って声でも出して、精神的に病んでいるとアピールしてこいと」

 向精神薬は持っているだけでは罪に問われないため、リスクが少ないという。

 元ヤクザ、続けて曰く「完全にローリスク、ハイリターン。シャブなんかと違って、国が出している薬だから、合法という言葉がおかしいくらい普通の薬だから、初期投資が少ないので、それで売れるので、シャブさわるより利益率だけで言ったらボロ儲けですよね。いいシノギにはなりますわね。」

 このような現状に対して、厚生労働省の担当者曰く「非常に根の深い難しい問題だと考えています。今まさに検討を開始したところです」。

 山田宏哉記

【関連記事】
薬物販売をめぐる法とモラル



 2010.11.28 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ