ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2788)

  プロフェッショナル仕事の流儀
  「グラフィックデザイナー・佐藤卓」覚書


 NHKプロフェッショナル仕事の流儀「グラフィックデザイナー・佐藤卓」(11月29日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 グラフィックデザイナー・佐藤卓(54歳)。佐藤がデザインした商品の数々は、すっかり我々の生活に溶け込んでいる。

 銀座の雑居ビルで10人ほどで、同時進行で100件のプロジェクトを進めている。

 業務フローとしては、デザインのコンセプトを決め、デザイン案の作成と修正、クライアントの前でプレゼンテーションという流れになる。

 佐藤の仕事の流儀は、「商品の本質をつかんで、それをそのままデザインする」ことであり、「機能を突き詰める」ことであり、「物語を込める」ということである。そのためには、"自分"を消さなくてはならない。

 部下がデザインを前面に出した案を出してくると、ダメ出しをする。

 海外に行くと、少しでもデザインが気になった絵や雑貨を買いこんでくる。時間を見つけてはカフェで本を読み、週末には30年来やっているサーフィンに出かける。波乗りから、多くのことを学んだという。

 佐藤曰く「デザインが主役になってはいけない。気付かなくてもいい。生活に入り込めるようなデザインをすることが醍醐味」。

 佐藤の信条は「依頼以上の仕事をする」。クライアントから意見や課題を徹底的に聞き出す。普通のデザイナーは、クライアントから意見を差し挟まれるのを嫌がるため、これができない。佐藤は相手に媚びるのはなく、相手に合わせて、探っていく。

 佐藤曰く「言われたことをただやるのは、仕事とは呼ばない。」

 そんな佐藤にも、苦しい時代があった。

 子どもの頃から絵を描くのが好きだった。アーティストを志した。東京芸大にも合格。しかし、アートで生計を立てるのは難しかった。

 結果、広告代理店にデザイナーとして入社する。先輩の手伝いとして、地味な作業に従事するが、煮え切らない自分がいる。アートへの思いが断ち切れなかった。

 仕事の合間を縫って絵を描き、コンクールに応募する。しかし、引っかかりもしない。

 いつしか東京芸大の後輩たちが育ち、アートの世界で認められ、脚光を浴びるようになっていった。それは佐藤の自尊心をひどく傷つけた。

 そんな中、転機が訪れた。佐藤がある日「飲みたいウィスキーが一本もない」と言ったことから、ウィスキーの新商品の開発にゼロから参画することになった。佐藤はデザインを担当し、PURE MALTとして結実した。

 自分の作った商品が世の中に響いた。共鳴した。「デザインって面白いかも」。初めてそう思った。

 こうして佐藤は、キシリトールガム、明治おいしい牛乳、ゼナ、PURE MALTなど、数々のヒット商品のデザインを手掛けていくことになる。

 佐藤にとってプロフェッショナルとは「さりげなくいい仕事をする人」。曰く「頑張るとか一生懸命であるとか、表に出すな。そんなのは当たり前のことだ。」

 山田宏哉記



 2010.12.2 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ