ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2796)

 金子みすゞ作詩「海とかもめ」を味わう

 ふとしたことで、金子みすゞの詩「海とかもめ」が目に留まりました。短い作品ですので、全文を引用します。

 [転載開始]

 海は青いとおもってた、かもめは白いと思ってた。

 だのに、今見る、この海も、かもめの翅も、ねずみ色。

 みな知ってるとおもってた、だけどもそれはうそでした。

 空は青いと知ってます、雪は白いと知ってます。

 みんな見てます、知ってます、だけどもそれもうそか知ら。

 (金子みすゞ「海とかもめ」)


 [転載終了]

 味わい深い詩です。行間からは幾通りもの解釈を引き出すことができます。

 以下、あくまで僕の解釈ですが、この詩を読んで感じたことを記しておきます。

 空と言えば「青い」。雪と言えば「白い」。この種の紋切型の常套句には気をつける必要があります。物事を概念で判断していると、やはり感性が鈍くなるのではないかと思います。

 実のところ、僕たちはあまり真剣にモノを見ていません。それで生活に支障はないからです。

 美術館で絵画の前に立っても、すぐに飽きてしまう人は多いと思います。

 絵画の観賞方法にも一定のコツがあります。主題の選び方や構図、タイトルの付け方、歴史的背景や画家の人生との重なり具合など、一定の補助線を引いてみると、非常に面白い世界が広がります。

 僕は写真を撮り始めて、初めてこのことに気付きました。それまでは、単に「見ているつもり」でした。あるいは「知っているつもり」でした。

 まっとうな大人であれば、金子みすゞの「みんな見てます、知ってます」という言葉が刺さるのではないでしょうか。「何か勘違いしていないか?」という無言の問いかけが迫ってくるようです。

 おそらく、僕たちの日々の生活の中にも、「青いと思っている海」があり、「白いと思っているかもめ」がいる。そのことを自覚しておきたいものです。

 山田宏哉記



 2010.12.7 記事一覧へ戻る 文筆劇場・ト