ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2802)

 NHKスペシャル「メイド・イン・ジャパンの命運」覚書

 NHKスペシャル「メイド・イン・ジャパンの命運」(2010年1月24日)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 埼玉県にある東芝の深谷工場。1965年建設。地域の雇用を守り続けてきた。新製品開発のための最重要拠点である。およそ半世紀にわたり、日本のモノづくりの盛衰を見てきた。

 ここで他の追随を許さないTV「セル・レグザ」を開発しようとしていた(「東芝科学館」にも展示してある)。

 価格は100万円。最高級の画質。8チャンネル26時間分の番組を同時録画。スーパー半導体セルプロセッサをもちいたTVになる。中国や台湾メーカーがついてこれない部分を狙う。

 「セル・レグザ」は、ソフトウェアの不具合の多さに悩まされていた。
 
 テレビがデジタル化する前はソフトウェアは縁遠い存在だった。かつてのアナログTVにおいては、技術者が現場の暗黙知で画面を調整していた。

 しかし1995年以降、ソフトウェアがモノづくりの主役に躍り出た。それがTVにまで押し寄せるようになった。TVがデジタルになり、現場の技術者では対応ができなくなった。

 テレビづくりの成否はいまやソフトウェアで決する。ソフトウェアの不具合が発生した場合、ソフトウェアの開発者に対応をゆだねる他ない。

 また、アジアのメーカーだけでなく、インテルのような企業も、アトムプロセッサを搭載したインターネットTVを市場に投入してきており、競争は益々激化している。。

 「セル・レグザ」は3000件の不具合を修正し、ようやく出荷にこぎつけた。ひと月1000台を国内向けに出荷する。

 いつまでここでものを作れるのか。いつまでここまで働けるのか。新たな製品を送り出す度に、胸に去来するという。

 従来とは違う方向からモノ作りに挑む企業もある。

 JVCケンウッド。披露されたのはチューナーボックス。テレビに組み込めば、ネット経由でラジオが聴くことができる。技術を貸し出し、特許収入を得るのが狙いだ。

 前田悟常務曰く「いまの日本メーカーがみんな言っているのは、アメリカがつくったアプリケーションにのっているだけなんです。逆に日本がアイディアを出して、それをライセンスにしたりしていく必要がある」

 前田は考える。「製品を売るだけではアジアとの競争に負ける。それよりも技術やアイディアを製品に組み込むことで利益を得られないか。モノを作るだけでなく、魅力的なシステムを作ることに日本の活路があるのではないか。」

 特許収入を得られるかどうかは、どれだけ多くの企業がこのシステムを採用するかにかかっている。

 2009年に日本国内で閉鎖が決定したテレビ工場は100を超える。かつて、世界最強のブランドだったメイド・イン・ジャパン。

 安さだけでなく、品質を手にしたアジアのモノづくりが日本を追い詰める。日本企業はどうするのか。その模索が続いている。

 山田宏哉記



 2010.12.12 記事一覧へ戻る 文筆劇場・ト