ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2807)

 クローズアップ現代「イグ・ノーベル賞」覚書

 クローズアップ現代「笑って考える!?イグ・ノーベル賞」(2010年12月13日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 ノーベル賞のパロディとして、「イグ・ノーベル賞」がある。

 1991年に設立以来、毎年10の業績や研究を表彰している。選考基準は「笑わせる」ことと「考えさせる」ことだ。

 2010年にノーベル物理学賞を受賞したアンドレ・ガイム博士は、2000年に全く別のテーマでイグ・ノーベル賞を受賞していた。

 イグ・ノーベル賞受賞の研究テーマは「カエルの浮遊」。超電導磁石を用い、カエルを空中に浮かせる画期的な実験だった。

 ガイム氏曰く「人々を楽しませたいという気持ちがカエルを浮かすというアイディアにつながりました。私は本当にイグ・ノーベル賞の受賞を誇りに思っています。」

 イグ・ノーベル賞の主催者であるマーク・エイブラハムズさん曰く「私たちが望んでいるのは、もっと笑って、もっと考えてほしいということです。」

 これまで200を超える研究や実績に送られたイグ・ノーベル賞の中から番組では以下のような研究が紹介された。

 2005年物理学賞受賞。クイーンズランド大学(オーストラリア)のジョン・メインストーン名誉教授。石炭から作られるピッチと呼ばれる個体のような物質を"液体化"する実験に取り組んでいる。

 メインストーン氏曰く「ピッチは個体のように見えますが、長い時間間隔の中では、なんと液体のように振舞うのです。」

 1927年に実験開始。一滴分を抽出するのに10年かかる。普通の学者なら絶対にやらないような気長な研究者魂が評価された。

 メインストーン氏曰く「しずくが落ちる瞬間は突然きますから、残念ながらまだその瞬間を目撃した人はいません。だから、あと100年は実験を続けます。」

 1998年安全技術賞受賞、トロイ・ハートバイスさん。20歳のときクマに襲われたため、クマに襲われても大丈夫な防護服を開発した。

 防護服の強度を高めるため、自分を実験台にして、バットで殴られたり、トラックに轢かれて跳ね飛ばされたりする"実験"を繰り返した。

 ハートバイス氏曰く「防護服には私が開発した特殊な衝撃吸収材が入っているんだ。だからトラックがぶつかっても、ハンマーで叩かれても、衝撃を感じません。」

 2005年栄養学賞受賞、ドクター中松こと中松義郎氏。42歳の厄年をキッカケに食事の写真を撮影し始め、自分の健康状態のデータと照らし合わせてきた。34年間の研究の結果、「体調は3日前の食事に左右される」という結論を導き出し、栄養学者を驚かせた。

 中松氏曰く「サイエンティフィックなものはデータがたくさんなければ信用できないので、大変な数を撮ったんです。」

 今年、2度目のイグ・ノーベル賞を受賞した公立はこだて未来大学の中垣俊之さん。生き物の情報処理の仕組みを研究している。実験に用いるのは粘菌。

 中垣氏曰く「(粘菌は)情報処理とか考える時にはとってもやりやすい。」

 粘菌は単細胞生物だが、「知性の片鱗があるのではないか」と中垣さんは考えた。生物学の根本を問う実験を繰り返している。

粘菌に"迷路を解かせる"という実験等を通して、粘菌は管の長さと流れる栄養の量によって身体が変形することを明らかにした。

 さらに人間のような知性の原型が存在している可能性があるという意外な発見が2度にわたる受賞につながった。

 さらにいま「記憶」や「予測」に似た能力があることを実証しようとしている。

 中垣氏曰く「生き物の賢さの仕組みを示したい。物質科学としてどこまでも推し進めて見たいというのが僕の気持ちです。」

 普通、研究者は、同僚の眼や研究費の獲得という視点から、自分の研究にリミッターをかけ、手堅い研究テーマを選び、あまり変なことはしない。しかし、そのような中からは革新的な研究成果も生まれない。

 イグ・ノーベル賞の存在は、そのような風潮に対するアンチテーゼでもある。

 山田宏哉記



 2010.12.15 記事一覧へ戻る 文筆劇場・ト