ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2808)

 クローズアップ現代「胎児エコー検査 進歩の波紋」覚書

 NHKクローズアップ現代「胎児エコー検査 進歩の波紋」(2010年12月14日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 妊娠中の赤ちゃんの様子を調べるエコー検査。ほぼすべての妊婦が受けている。

 技術の進歩により異常が見つかるケースが増えてきた。割合は100人に2〜3人。異常が見つかった人の中には、パニックを起こしたり、中絶する人もいる。

 「産むか、産まないか」を決めるのは女性の自己決定権という考え方が国際的にも広がっている。その一方を理由に、異常を理由に人工中絶をする人が増えれば、障害や病気を抱えた人に対する差別を助長するのではないか、という声もある。

 神奈川県立こども医療センター。エコー検査を使って高度な医療が行われている。かつては出産前に重い心臓疾患を発見できる確率は1割以下だったが、最近では発見率が6割を超えている。

 川滝元良医師曰く「胎児診断によって、助けられなかった人を助けることができるし、助けられる人をより助けることができる。」

 一方で、胎児の異常が告げられたために、妊婦がショックを受けるケースが相次いでいる。

 茨城県の女性。妊娠六カ月で「脳や消化器に疾患が見られる」と告げられた。曰く「天国から地獄。エコーというのはこういうこともあるんだよというのであれば、心の準備もできたかもしれませんが」。

 その後の検査で18トリソロミーという染色体異常の可能性が高いと告げられた。心臓や中枢神経に重い障害があり、死産する可能性も少なくない。女性は人工妊娠中絶を決断。

 突然、重い事実を告げられ、ショックを受ける人は少なくない。さらに混乱を招いているのが、100%病気を特定できるとは限らない点。

 エコー検査で染色体異常の可能性が高いことを告げられた女性曰く「お腹の子が親を選んでくれたのだから、どんなに重い障害があっても、たとえ元気に生まれてこれなくても、お腹の中で亡くなっても、このまま育ててあげたい。」

 そして、今年1月男の子を出産。エコー検査で指摘された異常はどこにもなかった。エコー検査は病気によっては、ひとつの目安に過ぎないとわれている。

 ゲストで招かれた国際成育医療研究センター医師の左合治彦さん。曰く「エコー検査は、聴診器のように当たり前に使われています。赤ちゃんが発育しているかどうかといったことの確認になるし、妊婦さんも安心する。」

 「その一方で異常が見つかると"出生前診断"になる。その検査を受ける前にそういう情報を受け取っていなかったり、心の準備もできてない。そういうことが妊婦さんを苦しめている原因だと思います。」

 日本の法律では"胎児異常"を理由とした人工中絶を認めていない。出生前診断で障害がある胎児を中絶する傾向が強まれば、障害がある人の存在が脅かされるという面もある。

 いくつかの大学病院では「形態異常を疑う情報、染色体異常を疑う情報」が発見されることがある旨を文書で通知する取り組みを始めている。さらに、その結果を「知りたいか、知りたくないか」も予め確認をとっておく。

 川崎医療福祉大学教授の黒木良和氏曰く「超音波(エコー検査)が妊婦健診に組み込まれていて、それが出生前診断であるという認識が、医師にも妊婦にもほとんどない。情報提供のあり方や妊婦の希望もふまえて、説明ができる体制にならないと非常に困る。」

 山田宏哉記



 2010.12.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・ト