ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2821)

 特報首都圏「縮む日本・何を残し何をあきらめるか」覚書

 NHK特報首都圏「縮む日本・何を残し何をあきらめるか」(2010年12月10日放送)を視聴しました。その覚書は以下の通りです。

 日本のインフラが岐路に立っている。人口動態の予測では、2046年に1億人を割込み、65歳以上の割合は4割になる。

 千葉県習志野市。25年後に16万人から14万8千人に減り、予算規模も474億円から450億円へと落ち込むと予測されている。経営改革推進室長の吉川清志さん。住宅・学校・公民館がいつ建てられ、維持管理にどれだけの費用がかかるか計算した。

 結論は「すべての施設を残すことはできない」。すべてを残すには20年で800億円かかる。曰く「わたしたちが使っていた施設を時代の変化、ニーズに合わせて財政の厳しい中でどうやっていくか。」

 築44年の市民会館。だいぶガタが着ていて本格的な補修には2億円かかる。多くの公共施設が築30年以上となり、補修か廃止かの選択を迫られている。

 住民たちは「公共施設はあって当たり前」という意識が強く、危機感を共有できていない。

 市有地の売却を進めているが、景気がよくないため、強気の入札価格を提示できない。

 自治体向けのコンサルティング会社。ファインコラボレート研究所の望月伸一さん曰く「人口減少の時代に入ってますので、(公共施設を)右肩上がりで増やすのではなく、総量を圧縮するなど有効活用しなければならないと財政に負担がかかる。1日も早く自治体が気付いて見直すことが大切。」

 神奈川県秦野市。25年後には人口は17万人から15万8000人に。予算規模は445億円から427億円に落ち込むと予測。今年10月、公共施設の再配置に関する方針を打ち出し、その中で「公共施設(ハコモノ)は今後一切、建設しない」と明記された。

 公共施設再配置計画担当の志村高史さん。アイディア次第で今後ハコモノは作らなくて済むと考えている。市役所の駐車場にはコンビニエンスストアがあり、住民票の申請や図書の返却が夜間でもできるようになっている。

 志村さんたちは「公有地の定期借地制度」を活用し、行政サービスの充実を図りながら、年間1270万円の賃貸料を得る仕組みも作った。

 志村さん曰く「市の税金を使わなくても、住民へのサービスが拡大できる。これからの公共施設の再配置を進めていくには非常に大事な考え方だと思います」

 ハコモノを作らずに済ますためにポイントとなるのは「施設の統廃合」。今後、人口が減るので、学校や公民館に「空き」ができる。それに合わせて複数の施設を合わせて維持管理費用を圧縮。整理した土地は売却や貸し出しに充てる。

 志村さん曰く「秦野市の財政状況が許す以上の公共施設を持っている。いくつかに絞り込んで、残す施設に集中的に投資していく。圧縮していかないと、維持費用どころか、道路や下水道の更新費用も出てこない時代がくる。なんとしてでも進めないと将来の秦野市民に大変なツケを残すことになります。」

 ゲストで招かれた野村総研上級コンサルタントの宇都正哲氏。曰く「市民の方が当惑されているというのがよくわかりますね。今までは新規施設を作っていくという時代でしたが、統廃合に関しては強い抵抗がある。理解を得るためには、施設単位のコストを明確にする必要がある」

 長野県。一日に8000台以上が利用する橋の路面が突如として陥没した。一歩間違えば大惨事だった。築75年。事故前に亀裂を発見し、対応を検討している最中の事故だった。

 インフラの深刻な老朽化と予算の間で葛藤が続いている。長野県の3800の橋のうち、補修が必要な橋は1029橋ある。

 そのうちのひとつ屋島橋(築41年)。一日3万3000台が利用。少しずつ補修をしながら、定期的にコンクリートの強度を確かめている。老朽化が進んでおり、ハンマーで叩くとコンクリートが剥離し、破片が崩れ落ちる。あと10年もすれば、橋梁そのものの寿命が尽きるという。

 橋の補修にかけられる予算は年間15億円。今後、増える見込みはない。

 長野県道路交通管理課長の木賀田敏文さん曰く「今後、急速に高齢化する橋梁をどう維持管理していくか。大きな課題になっている」

 埼玉県飯能市。国道299号線沿いを流れる高麗川。対岸には集落があり、橋が国道と集落を結ぶ唯一の手段となっている。

 築52年の天神橋。対岸の50世帯と国道を結んでいる。去年から橋を架け替える工事が行われている。費用は2億円。飯能市が年間の橋の架け替えに使える額とほぼ同額になる。

 天神橋の上流にかかる鎌倉橋。築80年。対岸には14世帯が住む。6年前から住民の大野さんは橋の改修を市に陳情している。「市は早急な対策が必要」としながらも、予算の目処を立てられずに今に至っている。

 大野さん曰く「本当、心配ですね。地元の住民はこの道路、橋がなかったら、毎日の生活がまったく順調にいかなくなる。」

 飯能市には道路や橋の補修要請が多い日には10件近く寄せられている。苦情は年間700件に上る。道路の補修は小規模のうちに対処しないと、本格的なうちかえが必要になる。

 飯能市道路建設課主任の春原秀樹さん曰く「補修や架け替えの必要があるところがいっぱいあるんですけど、財政的に厳しく、手が回っていない。」

 私たちはどうすればよいのか。

 ゲストの宇都正哲氏曰く「ポイントは3つ。1.あって当たり前のものではない。2.自治体が使えるカネは減る。3."縮む社会"を受け入れる。」

 (以上、2200字)

 山田宏哉記

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 2010.12.24 記事一覧へ戻る 文筆劇場・ト