ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2822)

 "種子メジャー"の戦略を分析する

 「日経ビジネス」2010年07月19日号で特集「食料がなくなる日」が組まれています。内容的には「モンサントの研究」と言ってもよいでしょう。

 まず率直な感想を言えば、よくモンサントに取材できたと思います。これだけで特筆に価するでしょう。

 非常に重要な記事なので、この記事で書かれていることを以下、簡単に要約します。

 戦略物資を牛耳る企業を"メジャー"と称することがあります。"石油メジャー"であればエクソンモービル、"穀物メジャー"であればカーギルという具合です。そして近年、"種子メジャー"として急速に台頭しているのがモンサントです。

 食料問題を考える上で、世界の農地に限りがある以上、単位あたりの収穫高を上げていくことは不可欠です。そこで注目されるのが"種子"です。特に遺伝子組み換え(GM)技術によって高い生産性を付与された作物が重要です。

 日本ではあまり知られていませんが、時代状況は既に「遺伝子組み換え食品」を批判していれば済むような状況ではなくなっています。

 [引用開始]

 GM作物が飛躍する転機となったのは90年代半ばに導入された大豆やトウモロコシ、綿だ。メーカーは安全性が証明されたと発信したが、消費者からは強い反発を受けた。生産者も最初は作付けに及び腰だったが、GM種子メーカーは、生産者の手間隙を省く特性を持たせた種子を開発して生産者に粘り強く訴え続けた。

 農家からの支持を得たのは、除草剤耐性や害虫に抵抗力があるGM作物だ。農家は害虫からの被害を抑えるために殺虫剤をまくが、害虫に耐性のある種子を植えれば殺虫剤散布の回数を大幅に減らすことできる。農家にとっては、コスト削減とともに収穫量が上がるという2つのメリットをもたらす“魔法の種”として作付面積は急速に広がりつつある。(「日経ビジネス」2010年07月19日付、P28)

 [引用終了]

 記事によると現在、アメリカでは大豆の91%がGM作物であり、モンサントのGM大豆の種子の世界シェアは9割超と予想されています。つまり、種子メジャーが"食の基幹部分"を握りつつあります。

 さて、僕の考えでは、モンサントの他の企業にはない強さの秘密は次の3点に集約できると思います。

 1.潤沢な研究開発体制が整っている

 2.強力なロビー活動

 3.徹底した地財管理

 項番1については、売上高R&D(研究開発)比率は9〜11%になりますが、特に見逃せないのは優秀な研究者の獲得に余念がない点です。

 記事によると、日本は消費者の反発が強かったために、既に「遺伝子組み換え」の研究体制が崩壊しています。ですので、日本人がこの分野の研究者として生きていくには、モンサントやディポンに入社するのが良い、という話になります。

 これは決定的な政策判断ミスだと言えます。

 項番2については、この分野は政府の許認可を必要とするので、自然と官と"人材交流"をすることになります。この点については、"穀物メジャー"のカーギルも共通しています。

 項番3については、要するに「種子を毎年買うという契約を農家に徹底させ、こっそり種子を隠し持って翌年にまくような農家には訴訟を度々起こす」という話です。だから、「農家は毎年、モンサントから種子を買い続けなければならない」。

 このやり方に賛否はあると思いますが、非常に収益性の高いビジネスモデルであることは明らかでしょう。

 そして現在、モンサントが狙っているのが、アフリカとアジアへの進出であり、「人が直接食べるGM作物の普及」であり、さらには「GM小麦の普及」です。そのとき日本は、本当に安定的に食料を調達することができるのか。

 いずれにせよ、今後、種子メジャーの動向から目を離すことはできないのは明らかでしょう。

 (以上、1500字)

 山田宏哉記



 2010.12.24 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ