ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2962)

 鋭い思考、冷たい心臓

 震災で馬脚を現してしまった人たちがいます。彼らに共通するのは、おそらく「他者に共感や感情移入ができない」という点です。

 僕たちは、自分の身の回りの家族や親戚、友人や知人が1人亡くなっただけでも、相当のショックを受けます。そして、今回の震災では、自分の周囲の人たちが一度に何十人も亡くなった方もいるようです。

 僕は、こういう「あたりまえのこと」を改めて見つめ直した方が良いのではないかと思います。

 2011年4月18日放送の「Dig」によると、現在、福島第一原発で作業している約1,300人のうち、9割が福島県民のようです。

 自分が原発に行かなければ、故郷が放射能汚染で住めなくなる。責任感が強い人ほど「逃げるわけにはいかない」という気持ちが勝つと思います。その心中を思うと涙が出そうになります。

 その一方、チェルノブイリの原発事故に関する統計資料等を持ち出し「福島県民は避難するべきですね」とか「統計的には避難の必要はないですね」とか言い放つ無責任さが勘に触ります。そこには避難生活をする人々に寄り添う気持ちが全くありません。

 知能指数が高い人は、得てして他者への共感度が低いことがあります。クールで鋭い思考を支えるのは、低体温のハートというわけです。

 特に虚弱体質型の学校秀才は、得てして"低体温"であることが多いと感じます。体温と心の温かさには相関関係があります。虚弱体質型の学校秀才は、人間味が薄く、冷酷になりがちです。

 表面的な言葉は思いやりに溢れていても「きっと本気で他者に共感や感情移入ができないのだろうなぁ」と感じてしまう人は結構います。

 日本人にとって身近な例を挙げれば、孫正義氏と堀江貴文氏はどちらもビジネスの才覚と先見性があり、頭の回転が速いことは間違いありません。

 しかし結果は対照的です。

 孫正義氏は日本で賞賛され、堀江貴文氏は世間の反感を買って逮捕されました。孫氏は過剰なくらい他者に感情移入するが、堀江氏は殆ど他者に感情移入しないように見えます。

(ちなみに「プレジデント」2011.3.7号で孫正義氏の特集をやってましたが、ホリエモンの孫さんに対する感情はかなり屈折しているように感じました。曰く「孫さんは中年で髪が少ないから好感を持たれる」等。)

 やはり人は「他者の痛みを感じない人」にはついていかないようです。

 僕自身にも思い当たる節があります。

 僕は高校時代から"シニカルな物言い"が得意でした。大学時代も氷の刃が突き刺さるような"鋭い物言い"を心掛けてきました。

 温かみのある表現では、注意を喚起できないと思っていました。今にして思うと、それは単に僕の技量不足でした。

 今こそ改めて、桜井章一氏の「心温かきは万能なり」という言葉を噛みしめたいと思います。

 (1200字)
 
 山田宏哉記

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 2011.4.19 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ