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 サイバー・ラボ・ノート (2964)

 有馬哲夫(著)『原発・正力・CIA』覚書

 有馬哲夫(著)『原発・正力・CIA』(新潮新書)を読了しました。

 2008年に出版された本ですが、日本で原発が作られるようになった起源がよくわかり、非常にタイムリーです。内容はタイトルそのままです。

 僕が読売新聞の社主だった正力松太郎という男に興味を持つようになったのは、佐野眞一(著)『巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀』を読んで以来です。

 以前、編集アルバイトをしていた出版社の方が「ジャーナリズムに関わる人の必読文献」と評していたので、それを真に受けて読みました。

 「原発の父」であることはあくまで正力の顔の一面ですが、今はその文脈で語られることが多くなっています。

 正力松太郎はアメリカのCIAとの繋がりも深く、「ポダム」という暗号名で登場します。なぜ、CIAは正力に目を付けたのか。

 本書によれば「讀賣グループは正力の支配が強いため、彼とコネクションを築けばこのメディア複合体全体を動かすことができる」からであり、「アメリカ情報機関にとって讀賣グループはもっとも扱いやすく、また親近感が持て、高い効果も期待できるメディアだった」からでしょう。

 正力も自分が国会議員となり、総理大臣の椅子に付くため、積極的にCIAを利用しようとしたようです。その政治カードのひとつが原子力発電でした。

 [引用開始]

 正力にとっての原子力発電は戦前の新聞に似ていた。つまり、それを手に入れれば、てっとりばやく財界と政界に影響力を持つことができる。いや、直接政治資金と派閥が手に入るという点で、新聞以上の切り札だった。(P35)

 正力は、国会議員の椅子がかかっている以上、CIAから資金援助がなくとも(略)、自らの野望のためにとにかく讀賣グループを総動員して原子力平和利用キャンペーンを展開しなければならなかった。(P80)

 [引用終了]

 
 本書によると、正力は自宅の家庭用発電機として使うため「小型の原子炉を購入したい」と言ったようです。核燃料を「がいねんりょう」と読んだこともあるようです。おそらく、技術面のことは全くわかっていなかったのでしょう。

 後知恵になりますが、そのような"技術への疎さ"が原発事故が起きても原子炉の製造者・製造国政府に責任はないという免責条項の受入れにもつながっていったように思います。

 また民間企業が原発を運営するのに、国が原発事故の賠償責任を負うという歪な構造を生み出しました。

 福島第一原発の事故でも、このような原発導入当社からの問題がそのまま引き継がれることになりました。

 政府や東電の発表に信憑性がない原因として、責任者が「技術をわかっていないため、原稿を棒読みするしかない」という点が大きいと思います。

 しかし、それは何も今に始まったことではなく、「原発の父」からしてそうだったのです。

 (1200字)
 
 山田宏哉記

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 2011.4.24 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ