ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2966)

 東京電力の人件費削減計画を問う

 本日付の日経新聞に、東電の人件費削減計画が掲載されていました。色々と思うところがあったので、少し長いですがまずは引用します。

 [引用開始]

 東電、新規採用見送り、役員報酬半減など、年540億円を捻出。

 東京電力は25日、2012年度の新規採用の見送りや組合員の給与削減などを柱とする人件費削減計画を発表した。約3万2000人の労働組合員の年収を約20%削減することで同日、組合側と妥結。役員報酬は会長や社長ら最大で総報酬から5割を減額する。
 東電は合計で年約540億円を工面し、被災した火力発電所の復旧費用や福島第1原子力発電所事故などの賠償資金の一部を確保する。

 東電は今回の合理化計画と別に、本業と関係の薄いKDDIなどの株式や不動産などを売却する準備を進めている。補償金の支払いは東電の自助努力が基本となる見通しで、さらなるリストラが不可欠だ。

 東電は12年度に1100人を採用する予定で、3月中旬までにエントリーシートの受け付けを締め切った。今後ホームページなどで本人に採用活動の見送りを通知する。

 07年の柏崎刈羽原発の運転停止で、役員は現在賞与の不支給などで報酬の20%、管理職は年俸の5%、組合員は賞与3%を減らしている。今回は運転停止前の水準からの削減となる。

 東電、一段のリストラ必至。

 東京電力がまとめた新規採用の凍結や給与カットなどの合理化策は、巨額損害賠償に備えたリストラの序章にすぎない。東電の賠償支払い支援を巡って政府が検討中の最終案では東電の負担上限は示されておらず、これから財務負担がどれだけ膨らむかは見えない。資産売却はもちろん、抜本的なリストラは必至だ。

 給与カットなどの効果は年540億円程度。福島第1原発事故の賠償総額は「兆円単位」、東電の資金負担は分割払いでも「千億円単位」とみられ、今回の合理化策ではまかなえない。

 次の焦点は東電が抱える保有株式やグループ会社の売却など資産リストラ。売却可能な資産の洗い出しも進めていたが、「売却する場合、相手側と協議しなければならない」(東電幹部)こともあり作業は遅れている。

 一方、資産売却で千億円単位をひねり出せても、社内では「一時的な資金捻出にすぎない」との見方もある。

 勝俣恒久会長は、損害賠償について「資産売却をいくらやっても、全額東電の負担になったら、とても足りない。国に(賠償支援の)スキームを決めてほしい」と訴えてきた。政府が現在検討中の支援策は賠償額が東電の返済能力を超えるなど「異常な場合」に国が資金補助する仕組み。「負担の上限が示されないと、東電が乗りにくい内容」(電力大手幹部)とみられている。

 清水正孝社長は抜本的な経営合理化について「(電力の)安定供給と安全の確保が前提」と説明するが、政府支援を引き出すためには自助努力をギリギリまで続ける必要がある。大幅な人員削減など一段と踏み込んだリストラ策が出てくることは確実だ。(「日経新聞」2011年4月26日付)

 [引用終了]


 ひとつ忘れてはならないことがあります。それは福島第一原発の事故はまだ収束していないということです。

 特に気になるのが東電の一般社員の年収2割減です。「甘い」と言う気持ちはわかりますが、東電社員は既に社会的制裁を受けており、社員のプライドは深く傷付いているでしょう。これ以上の賃金切下げは深刻なモラルダウンをもたらすと思います。

 東電社員には職務を完遂して貰わないと困ります。モラル低下はその妨げになります。

 自分のこととして考えればわかると思いますが、勤務先の会社が世間からバッシングを受け、年収が2割カットされることで、勤労意欲が上がることはまずありません。今、東電の一般社員が「手抜き」をすると、困るのは私たち自身です。

 もっとも、批評をするなら「東電の一般社員の年収カット2割とは甘過ぎますね。原発事故で故郷や仕事を失った人に対する誠意が全く感じられませんね」と言った方がウケがいいのはわかっています。

 しかし、実務家としては一般社員の年収大幅カットが日本に良い結果をもたらすとは思えません。

 エリート意識を持った東電社員の鼻っ面がへし折られ、年収も大幅カットとなれば、多くの国民が「いい気味だ」と思うでしょう。格好の「憂さ晴らし」にもなると思います。
 それでも、よく考えたいのは、それが原発の事故処理、事故対策や電力の安定供給に良い影響を与えるか、ということです。

 もともと、東電は営業利益率が高い。賠償金は何も一括払いにする必要はないでしょう。

 「ニワトリ」を殺すのは愚策。生かして「卵」を取り続けた方が良いものです。東電の原発事故に対する賠償は、長期的な分割払いにした方が被災者のためにもなるのではないかと思います。

 (2000字)
 
 山田宏哉記

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 2011.4.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ