ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2980)

 "意味のみえない試練"で篩にかける

 "うさぎ跳び"という足腰の鍛錬法があります。

 現代スポーツの文脈では、うさぎ跳びは「トレーニングとして効果が薄い」とか「膝が故障する危険がある」などと散々な評価を受けています。

 最近僕は、"うさぎ跳び"には隠れた目的があると気付きました。身体能力が高い人ならたぶん、膝を傷めないように上手くやります。

 つまり、うさぎ跳びには「運動センスのない負傷者・脱落者が抜けるという選別機能」があるのです。

 一見、「意味のない訓練」の本当の目的はスクリーニング(選抜)であることが結構ある。

 是非はせておき、これは受験勉強にも当てはまります。受験勉強には「暫定的に人間の知的能力に優劣を付ける」という意味があります。

 優秀な人を選び出すためには、集団に「意味のないように見える作業」をさせるのが効果的です。誰しも意味のあるように見えることには熱心に取り組むが、意味のないように見えることには熱心になれない人が多いものです。

 しかし、「自分が意味あると考えることしかしない」人は、その時点で優秀ではありません(「意味がないこと」と「意味がないように見えること」は全く違います)。

 例えば、集団で「穴を掘って、その穴を埋める作業」をやったとします。大多数の人は「こんな作業には意味がない」と考え手を抜くでしょう。

 しかし、ごく一部の人は地質を観察したり、上手く穴を掘るコツをつかんで面白がります。

 また、こういう人はいざ、発展途上国で井戸を掘ったり、戦場で敵に気付かれないように掘った穴を埋める場面に出くわすことも想定しながら作業しているかもしれません。

 この時点で「勝負あり」です。そしてこういうことは、大方の仕事にも当てはまるでしょう。

 内田樹氏のようなことを言いますが、言葉を覚える前の子どもは、言葉を覚える意味やメリットを知りません。だからこそ、成長が早い。技能を磨きたい大人もあまり自分の行為の意味やメリットを考えない方が良いと思います。上達速度が鈍るからです。

 社会人でもエクセルの関数を使いこなせる人と使いこなせない人がいます。vlookup関数とif関数くらい問答無用で覚えるべきですが、使いこなせない人に限って「関数を使う意味とメリットがわからない」などと寝ぼけたことを言います。

 大仰な言葉使いは、得てして仕事の遅さを誤魔化すために使われます。「確認する」と言えば済むものを、「確認作業工程を実行することを検討中」とか言ったりします。まずは無駄な思考や言葉を削ぎ落とすことが、スピードアップの秘訣でしょう。

 そういう人には素直さや謙虚さが足りないと思います。

 ビジネスの世界で言う「素直さ、謙虚さ」のわかりやすい例を挙げると「やる前から『できない』と決め付けない」とか「意味のないように見えることにも熱心に取り組む」といったようなことになると思います。

 それは必ずしも「低姿勢」ということではありません。

 もっと言えば、やるべきことを前にして、「物事の意味は事後的にわかればいい」と考え、ことにあたれるか。あるいは「自力で意味を見出せるか」。

 問われているのは、この点だと思います。

 (1200字)

 山田宏哉記

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 2011.5.17 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ