ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2986)

 震災ボランティアの戦友たち 合同葬儀準備篇

 本日(2011年5月28日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

 9:45〜11:00 教室片付け
11:00〜12:00 遺留品の運搬
13:00〜14:30 トイレ清掃
14:30〜15:30 全体清掃

 この日の主たる任務は「合同葬儀を行うため、会場となる小学校の体育館から遺留品を搬出し、会場とその周辺の片付・清掃を行う」というものだった。

 朝から小雨が降っていた。雨の場合、屋外での作業は中止となり、屋内作業となる。「放射能の影響を気にする人がいるから」だ。

 僕たちは16名でマイクロバスに乗り込み、現場に向かった。うち地元民は1名。座席数が3つ足りなかったので、3人がバス後部の床に座ることになった(僕は床に座って、他の2人と雑談した)。

 作業としては、まず小学校の教室に、養生やブルーシートを敷き、遺留品を運搬できるようにした。その間、別のグループは遺留品の袋詰め作業をした。そして、両者の作業が終わった後、遺留品の運搬に取り掛かるという段取りだった。

 現場には、群馬県の某市からボランティアで来た人たちもやってきた人たちもいて、一緒に作業をした。

 教室には、小学生たちの日常の生活用具が置かれたままになっていた。壁に掛けられた時計も止まったままだった。

 ここに津波に呑まれた遺留品を運んで、体育館のスペースを確保する。本来は子どもたちのための空間である以上、「教室を汚さない」ということにかけては、細心の注意を払った。

 教室側の準備が整うと、小休止の後、いざ土嚢袋に詰められた遺留品の運搬開始となった。体育館と教室の距離はおおよそ30メートルくらいで、遺留品を持って、ひたすらその間を往復した。

 運搬の際、僕は「絶対に落とさないように」左右の手にひとつずつ、なるべく丁寧に持つようにした。一方、一度になるべく多く運ぶように持つ人もいれば、地面を引きずるように持つ人もいた。

 土嚢袋に詰められた遺留品は、重さは様々だった。そして、そこには人生の重みがある。感情や想像力のスイッチをオフにしないと、作業に支障が出る。

 運搬を終えると、体育館の床に敷かれたブルーシートを撤去した。

 そして昼休み。某市から来たメンバー全員には、某市から豪華な幕ノ内弁当みたいなものが配付されたが、私たち17人(途中から1人、飛入参加)には何も配られなかった。私たちのあいだでは、それが若干、不満として燻った。

 昼食時、地元の方から「風評被害」の話を聞いた。福島近県でレンタカーを借りようとすると「福島県には行かないで下さい」と念を押されるそうだ。また他県から軽トラ類を借りようとしても、貸してもらえないことが多い、とのことだった。

 午後から僕はSさんやMさんとトイレ掃除をした。

 Sさん(♂)は、静岡から来ていて、僕と同じく東京駅から"いわき号"を利用。60歳くらい。食品の製造工場で働いているそうだ。Sさんも自分がボランティア活動をする写真や津波被害の写真を撮ることにこだわりがあった。

 Mさん(♀)は大阪から来ていて、前日はガレキ撤去をした、とのこと。技術職の公務員。ネットで安全靴を買い揃えたが、普段の公務員用の作業着を着てきたそうだ。僕が毎週末、福島に来ている旨を言うと「羨ましい」と言っていた。

 トイレはどうやら、3月11日以降、一度も清掃されていないらしく、汚れが酷かった。このままだと、合同葬儀で一番印象に残るのは「トイレの汚れ」になりそうだった。

 当初は屋外のトイレだけを清掃する予定だったが、改めてトイレの場所を確認したところ、校舎1階部分のトイレも清掃することになった。

 屋外の男子トイレはブラシで便器をこすり、モップで床を磨き、バケツで水を流した。

 校舎1階の男子トイレはモップでの床磨きと「バケツで水を流す」ということができなかったので、直接、雑巾で床の汚れを拭き取った。

 僕は掃除屋の経験があるので、さして苦痛ではなかったが、一緒に作業をした若い男性は明らかに嫌がっていた。
 
 男子トイレの作業が終わり、Sさんが「女子トイレの方もやる必要があるんでしょ」と言うので判断に迷った。正確に言うと、気が引けた。

 Mさんからは女性用トイレも「汚れが酷い」と聞いていたので、女性用のトイレは女性のMさんたちに清掃して頂くことにした。

 トイレ掃除の結果、トイレも何とか"人が使えるレベル"にすることができた。

 トイレ掃除後は会場周辺にある泥を全般的に洗い流した(小学校は校庭に1メートルくらいの津波が到来していた)。

 現地の人によれば、おかげで会場とその周辺は、「震災前よりも綺麗になった」そうだ。

【写真】活動終了後、一緒に作業したSさんに撮って頂いた写真。


 山田宏哉記

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 2011.5.28 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ