ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2993)

被災地のハローワークをゆく 年収150万円からの復興

 先日(2011年6月4日)、福島県いわき市のハローワークを探訪した。

【写真】いわき市のハローワーク。この建物の1階部分。


 若者や主婦らしき人がパラパラ来ている程度で「殺到」という程のことはなかった。邪魔にならないように求人情報を確認してきた。

 雇用形態が正社員の求人募集でも、月給の下限が15万円以下の仕事が半数程度あった。

 下限に注目するのは、企業にとって、ここは「嘘がつけない部分」だから。そして得てして、下限の給与で働くことになるからだ。

 以下、目に留まった求人案件の月給の下限をまずは列挙する。

1.正社員の月給
(1) 交通誘導の警備員  ¥129,600
(2) 一般事務正社員    ¥125,000
(3) 総務兼現場事務    ¥119,780
(4) 看護師          ¥142,200
(5) 歯科助手        ¥150,000
(6) 接骨院の受付及事務 ¥120,530
(7) 回線工事技術者    ¥120,000
(8) 保育士          ¥130,000
(9) 介護職員        ¥115,000
(10)ルート営業       ¥150,000
(11)新規営業        ¥180,000
(12)経理事務        ¥130,000
(13)豆腐の製造      ¥135,000
(14)重機オペレーター   ¥180,000

2.常勤非正規雇用者の月給
(1)介護職           ¥120,960
(2)准看護師         ¥143,420
(3)事務補助         ¥116,000
(4)建築現場作業員     ¥172,800
(5)市役所相談窓口     ¥147,000
(6)経理事務         ¥112,000
(7)土木作業員        ¥142,800
(8)漁業協同組合作業員  ¥117,000

3.パート・アルバイトの時給
(1)温泉旅館フロント   時給¥700
(2)ホールスタッフ、    時給¥680
(3)配送・集金、      時給¥670
(4)クリーニング製品集配 時給¥660
(5)臨床検査技師     時給¥700
(6)経理事務        時給¥700
(7)ラーメン店        時給¥680
(8)清掃員          時給¥657

 何より、この金額を噛み締めて欲しい。これまで僕は肝心な部分から目を逸らしていた。

 1日8時間、月に20日働いても、大半は月収が15万円に届かない。賞与なしなら年収は180万円を切る。

 非常に厳しい話になるが、震災で仕事を失った方は、年収180万円(額面で月給15万円、賞与なし)の仕事に再就職できれば「御の字」だと思います。

 もはや昔の基準で考えることはできません。ハローワークの求人情報からは、そう言わざるを得ません。

 お金の問題はシビアだ。

 月給12万5000円(額面)で賞与なしだと年収150万円。これくらいが震災で職を失った人が再就職する際の標準的な労働条件になると思う。

 学費が比較的良心的な早稲田大学でも、文系学部で初年度約130万円、以後毎年約100万円かかる。月収12万円の家庭では、まず支払うことができない。

 声を大にして言わないだけだ。日本には「子供を私立大学に行かせられない」という悲哀を抱えた人がたくさんいる。

 また、いわき市在住の方に聞いた話では、漁業で使う"網"は何百万円もする代物らしい。多くの漁師は、借金をして"網"を買っている。

 今回の津波で、ボートは無事でも"網"をやられた漁師が多いという。また借金をして"網"を買うか、廃業するか。原発事故による海洋汚染もあり、判断は難しい。

 再就職の年収が150万円で、住宅ローンが残っていたら、家は手放さざるを得ないだろう。このような絶望感を想像せずに、「頑張れ」とか言わないようにしたい。

 原発を誘致する市町村なども、きっとそういう経済環境なのだと思う。

 大卒で初任給20万円を貰える東京の会社員が「原発の補助金漬け体質」を批判しても、そんな言葉は届かない。

 年収150万円からの復興。それが現実を直視した上での起点ではないかと思う。

 (1,600字)
 
 山田宏哉記

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 2011.6.7 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ