ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2996)

 震災ボランティアの戦友たち 豚小屋解体篇
 
 昨日(2011年6月4日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

  10:30〜15:00 瓦礫撤去(豚小屋解体を含む)

 朝、ボランティアセンターに行くと、何かの案件の募集が行われていた。募集人数は20名。何の募集かはわからなかったが、早く現場に入りたかったので、とりあえず挙手して志願した。瓦礫撤去の案件だった。

 リーダーを務めたのは、地元在住のSさん。息子さんと2人で来ていた。昔、空手をやっていたそうで、今は息子さんが空手をやっているという。ボランティアをするのは約1ヶ月ぶりだそう。僕はSさんが運転する車に乗って、現場に向かった。

 Sさんの車には、Tさんも同乗した。定年退職された方で、大阪から直通の高速バスで片道12時間かけてやってきたそうだ。1週間ほど福島に滞在し、この日の夜、大阪に帰るという。「田んぼの瓦礫拾い」が最も大変だったそうだ。

 メンバーの中には、半袖にスパッツ、足元はビーチサンダルという男性もいたが、さすがに現場では着替えていた。

 この日の作業現場は、これまでで最も危険だった。現場は、ドブ川の上に半壊した豚小屋の屋根が覆いかぶさっていた。これを撤去するという。当然、豚はもういない。

 先週、側溝とドブ川の泥掻きをした現場の隣で、ボランティア仲間と「あれは危険すぎてボランティアには手を付けられない。業者に頼まないと無理だね」という話をしていたところだった。

 ところが業者も「これを片付けるのは無理」と判断した。こうなると誰も片付ける人がいなくなってしまう。そのため、この作業が僕たち震災ボランティアに回ってきた。

 危険は大きく2つある。屋根は脆くなっている箇所があり、うっかり踏み抜けば瓦礫だらけのドブ川に転落する。また、作業中に豚小屋が崩壊して押し潰される可能性もあった。

 僕たちはまず、豚小屋の瓦を撤去するところから始めた。僕は壊れた豚小屋の屋根にのぼり、瓦を1枚1枚剥がしていった。直下は瓦礫や木材まみれのドブ川で転落したらタダでは済まない。慎重に屋根の強度を確かめながらの作業だった。

 瓦を剥がす作業では、僕が先頭に立ち、危険な作業を請け負った。他のメンバーはなるべく豚小屋の上にのぼらずに済むようにした。Sさんが豚小屋の屋根を踏み抜き、あわや転落という局面もあった。
 
 豚小屋は津波の直撃を受けていて、瓦の間には乾いた泥が溜まっていた。瓦を剥がす度に、泥が崩れ落ちた。瓦は一番下のものは釘で打ちつけてあり、剥がすと釘が剥き出しになるため、注意が必要だった。その他の瓦は「置いてあるだけ」だった。

 豚小屋が半壊状態のため、そこら中で釘が剥き出しになっていた。作業していて、釘の突起物のようなものを感じたら、皮膚に刺さる前に瞬間的に引っ込めるような反応ができないと厳しい。

 瓦を剥がしたところから、順次、バールで壊していった。瓦のない屋根は脆く、バールで叩くと張ってある板が簡単に折れた。埃の量が凄く、防塵マスクは必須、ゴーグルもあった方が望ましかった。

 ドブ川に覆いかぶさった豚小屋の屋根を撤去すると、僕はドブ川に入って木材や瓦、その他廃材を川の外に出した。若干、長靴の中に泥が入った。倒れた植物が行く手を遮ったが、ノコギリで切断しながら、作業を進めた。

 豚小屋はほぼそのまま残っているところもあった。いつ壊れてもおかしくなく、のぼるのは危険だったので、僕ひとりだけがのぼって瓦を剥がした。

 瓦撤去後、リーダーのSさんに「この小屋どうしますか」と確認すると、「ロープで引き倒しましょう」となった。

 ロープを2本、豚小屋の柱にくくりつけ、みんなで手前に引いた。あえなく豚小屋の柱は地面から抜け、引き倒すことができた。同時に辺り一面に砂埃が舞い、作業者たちはみな、豚小屋に背を向けた。

 砂埃がおさまると、バールを持った男3人が、力任せに倒れた豚小屋を叩き壊し始めた。Sさんもバールで小屋を叩いていたが、途中で空手をしている息子さんに交代した。息子さんも憑かれたようにバールで小屋を叩き続け、解体に貢献した。

 こうして豚小屋は跡形もなくなった。その廃材を片付けたところで、「そろそろ片付けて戻りましょう」という話になった。作業前には散乱していた瓦礫も、いつのまにか撤去されて綺麗になっていた。

 帰りの車中、SさんもTさんも満足げだった。

 何と言っても、僕たちは業者も匙を投げたあの危険な豚小屋を解体した。怪我もなし。僕たちにとって、それが大きな自信につながったことは間違いない。
 
 山田宏哉記

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 2011.6.6 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ