ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2997)

 震災ボランティアの戦友たち リーダーの責任篇
 
 昨日(2011年6月12日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

  10:30〜15:00 田圃の瓦礫撤去

 朝、ボランティアセンターに行くと、「田圃の瓦礫撤去、6名」の募集がかかった。「きつい作業」とは聞いていたが、未経験だったので挙手。

 無事に僕を含めて5名がこの作業が決まった。さらに僕が現場のリーダーを務めることになった。これまでも、形式的にリーダーをすることはあったが、5人のチームを束ねるのは初めてだった。

 必要な資材を揃え、チームは二手に分かれて現場に向かった。

 僕は地元民のTさんが運転する軽トラックの助手席に乗り込み、他の3人は自家用車で移動した。

 現場付近につくと、Tさんが「確認してくる」と言ってトラックを降り、程なく「ここだ、ここ」と言いながら戻ってきた。

 僕たちは早速、被災者の方の話を聞いて作業を開始した。

 被災者の田圃には津波と共に木材や藁が流れ着いていて、稲作を再開するためには、まずそれらを取り除くことが必要だった。さらに塩分を含んだ表面の土を取り除きたい、ということだった。

 僕たちは作業範囲を確認した上で、まず木材や藁ごとに土嚢袋に詰め、災害ゴミの仮置場に運搬することにした。

 目立った瓦礫類は手で集め、藁類は熊手を使ってかき集め、それぞれ土嚢袋に詰め込んだ。

 田圃には水が張ってなかった。そのため、言われていたようなきつさではなかった。

 メンバーの様子を見ながら、適当な頃合で昼休みにした。被災者の方からはジュースや漬物をご馳走してもらえた。

 昼休み、現場から歩いて海を見に行った。海岸付近では、家は一階部分が押し流され、田圃には倒れた電柱や巨大な石が放置されたままだった。

 重度の津波被害を受けた家や田圃は放置され、被害が軽微なところの片付けをボランティアたちが担う。そんな構図が浮かび上がった。

 また、現場は福島第一原発からの距離が約30Kmの地点ということもあり、人気がなかった。

 午後になるとすぐ、Tさんと僕は土嚢袋を軽トラックにつんで、災害ゴミの仮置場に持っていった。藁は回収不可かと思ったが、幸い、回収してもらえた。

 さらにまた現場に戻って、土嚢袋に藁や廃木材を詰め込み、今度は全員で仮置き場に持っていって、運搬したゴミを捨てた。

 僕は災害ゴミの仮置き場では「重機の動きに注意して下さい」などの、当たり前の注意喚起をした。それでも、作業に夢中になって、稼働中の重機のショベルに接近する人がいた。

 リーダーは「当たり前のこと」であっても、逐一、言葉で説明した方が良い。

 現場に戻ると、既にいい時間になっていた。

 田圃の一面はおおよそ綺麗にすることができたものの、被災者の方から受けた依頼をすべてこなすことはできなかった。

 僕は、被災者の方にこの日の作業内容を報告し、今後の要望を聞き、次に来るボランティアに作業の続きをしてもらうことを約束して、被災者宅を後にした。

 帰りの車中、ボランティアセンターから電話がかかってきた。「依頼者のお宅に行きましたか」と聞かれたので、当然「行きましたよ」と答えた。

 すると「依頼者は『今日1日、ボランティアの方が来るのを待っていたのに、来なかった』と言っていましたよ」と言われたので、僕は混乱した。

 現場には同姓の方の家が並んで立っていた。どうやら僕たちは間違えて、"依頼者の隣の家"でボランティア活動をしてしまったようだった。

 本来の依頼人やこの不始末の後処理をするこになった事務所のスタッフに対しては、本当に申し訳ないことをしたと思う。そして、酷い徒労感に襲われた。

 直接的にはTさんの早とちりだったが、僕にも大きな責任がある。依頼人の本人確認は、僕自身がやるべきだったし、「ここです」という報告の裏も取るべきだった。
 尚、「依頼人を間違えていた」という話は、リーダーとしての僕の判断で、本人確認のミスをしたTさん以外のメンバーには伝えていない。

 厳しい判断だったが、作業を終え、被災者から感謝され、満足げにしているメンバーに「実は依頼人を間違えていた」と伝えるのは、流石に躊躇された。

 今後のボランティア意欲を考慮すれば、「わざわざ言う必要はない」というのが、僕の判断だった。

 帰着すると、僕は何事もなかったようにメンバーを集め、「今日はお疲れ様でした。また宜しくお願いします。後の報告は僕がやっておきます」と言って、チームを解散とした。

 そして、ひどく落ち込んだTさんと共に、事務所のスタッフに今回の不始末の侘びを入れに向かった。
 
 山田宏哉記

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 2011.6.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ