ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (2998)

 福島県いわき市で元原発労働者に訊く

 先日(2011年6月12日)、福島県いわき市でかつて原発で作業をされていた方からお話を伺う機会があった。

 予め断っておくと、これは"取材"で聞き出した話ではない。たまたまいわき市の公園で雑談していた初老の男性が、「実は原発で働いていた」と言い出してわかったことだった。

 だからこそ、メディア等で報じられている話とは、随分と趣が異なる。

 男性はいわきの競輪場からの帰宅途中だった。僕はちょうど震災ボランティアの活動を終えて、公園で長靴を履き替えていたところだった。

【写真】福島県いわき市。元原発労働者にお話を伺った公園。

 「どこに行ってきたの?」と男性に声を掛けられた。僕はこの日に行った場所と東京から毎週、ボランティアに来ている旨を告げた。すると男性は、色々と話をして下さった。

 「震災直後、この公園が給水場所になり、いわき市民が押し寄せた。この地下に貯水タンクがある。」
 
 「原発事故以降、ずっといわき市にいた高齢者の皮膚が赤黒く変色している」

 男性はそう言って、自分の手足を見せてくれた。ちなみに彼の左手の中指は、第一関節(指先に近い方の関節)から先が無くなっていた。確かに、彼の手足も不自然に赤黒くなっていた。

 「原発の影響ですか」と聞くと、男性は「そうだ」と答えた。彼はかつて原発で働いていた。

 曰く「事故直後、いわき市の放射線レベルが高くなった。市は安全だと言っていたが、避難した人の方が賢明だった。皮膚が赤黒くなった高齢者仲間には、"放射線検査を受けた方がいい"と助言するようにしている」 

 この日、いわき市のホテルで朝食を取っていた原発作業員らしき人の中にも、やけに肌が赤黒い方がいて、僕も気になっていた。

 曰く「原発作業員には、堅気の人が殆どいない。肌を黒くしているような人が多く、ベテランの技術者はごく少数。実際の原発作業員がどんな人たちかを知っているから、事故収束の目処は立たないと思う。」

 「いわきには双葉町などから避難して来た人が数万人いる。彼らの中には、やることがなくて、いわきの競輪場で博打をやっている人も少なからずいる。」

 「いわきでボランティア活動をしている人は、大半が県外から来ている。地元の若者たちは、競輪場などで遊んでいることが多い」

 「いわきは約30万人の都市なのに、市の職員が約5,000人いる。そのため、財政赤字が深刻なことになっている。」

 一番衝撃的だったのは、やはり「原発事故以降、ずっといわき市にいた高齢者の皮膚が赤黒く変色している」という話だった。

 「もともと赤黒かった」と言われれば、それまでではある。しかし、本人が「放射線被曝の影響」と言っていて、しかも実際に皮膚が不自然なほど赤黒い以上、これはキチンと調べるべき問題だと思う。

 重要なことは、既に「原発事故による健康被害」を"自覚"している福島県民が実在することだ。「皮膚が赤黒く変色」の話の真偽はさておき、こういう不安との葛藤の中で生活するのは本当に大変だし、このストレス自体、身体に良くないと思う。

 男性は重要そうな話を一通りし終えると、「それじゃ、またいわきに来てくださいね」と言って去っていった。
 
 山田宏哉記

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 2011.6.14 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ