ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3000)

 震災ボランティアの戦友たち 
    原発25km地点の瓦礫撤去篇

 
 一昨日(2011年6月18日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

  10:30〜15:30 個人宅敷地の瓦礫撤去・運搬廃棄

 この日の作業は、福島第一原発から25〜26キロ地点での瓦礫撤去だった。

 応募者確定後、「原発から近いですが、気になる人は辞退して下さい」という言い方をされた。辞退者ゼロだったが、その情報を知っていたら、応募しなかった人もいるのではないかと思う。

 作業メンバーは8名。現場リーダーは僕が務めた。防塵マスクとゴーグルを使用するようにお願いした。軽トラック1台を借り出し、合計3台の車で現地に向かった。

 まずは、依頼者の要望を確かめる。

 依頼人のお宅は、解体することになっていた。重機では細かい作業はできないので、そういう作業をすることになった。

 尚、住もうと思えば住めたようにも思えるが、「もうここには住みたくない」のだそうだ。依頼人のご家族は、津波の飲み込まれたが、奇跡的に一命を取り留めていた。近所では7名死亡とのことだった。

 作業範囲と現場の様子から、瓦礫の運搬量が多くなることが予想された。そこで軽トラックは常に稼動させ、災害ゴミの仮置場に瓦礫を運搬させることにした。瓦礫を降ろすのに手間がかかるのは知っているので、まずは2名を運搬廃棄専業とした。

 また、依頼者のお宅のトイレは使用できない状況だったので、近所の無人駅(震災以後、不通となった)のトイレを使うことになった。

 最初に全員で軽トラックの荷台に廃家電類を詰込んだ。廃棄物の中には、新品と思われる大型液晶TVなどもあり、「勿体ないなぁ」と思わずにはいられなかった。

 軽トラックを送り出すと、庭の瓦礫を一箇所にまとめ、軽トラックが戻ってきたときに積載できるようにした。庭には、他の家の"屋根"なども流れ着いていた。ここでも、木材から剥き出しになった釘が多く、取扱い注意だった。

 依頼者とも一緒に作業をしたが、「思い入れがあるから、壊して捨てる」と言っていた。

 災害ゴミの仮置場に瓦礫を運搬するトラックが戻ってくるまで、想定以上の時間がかかった。僕の判断で瓦礫の積み下ろしのため、運搬人員を更に2名増やした。また、ボランティアセンターに追加でトラックの要請をしたが、数不足で無理だった。

 現場の瓦礫撤去は順調に進んだが、運搬がボトルネックとなった。

 そのため、現場作業組には手待ち時間が生まれ、その分は依頼者の方の話を聴くことに振り向けた。

 特に依頼者が津波に飲み込まれたときの話が印象的だった。

 膝のラインまで津波が来たことは覚えているが、次の瞬間、気付いたら津波の中にいたそうだ。

 海中でクルクル回り、「もうダメかな」と感じたが、「(このまま死ぬのは)嫌だ」と粘った。水面に顔を出すことが殆どできなかったが、水泳の息継ぎの素養があり、流される途中、蔵の屋根に捕まり生還した、という。

 原発事故では、水素爆発が起きたときは、さすがに「避難したい」と思った、という。

 但し、この辺りの地域では、原発関係で生計を立てている人が多く、大上段に構えて「原発がどうこう」とは非常に言いにくい雰囲気があるそうだ。

 結局、軽トラックでは集積場と3往復するのがやっとだった。3回とも、荷台に目一杯積載したが、瓦礫の量が多く、残った分は次回に持ち越しとした。

 依頼者が不意に呟いた「家が壊れたことは仕方ないと思うけど、これから先のことを考えると泣きたくなる」という言葉には、ハッとさせられた。

 震災ボランティア活動が依頼者から感謝され、世間的に「立派」と言われても、どこか違和感がある。

 それはたぶん、僕には家族がいて、帰る家があって、平日にする仕事があるからだ。決して言われないが、津波で家族を失い、家が倒壊し、仕事を失った被災者とは、わかりあえないのだ。

 依頼者からは随分と感謝された。リーダーとしての役割も果たせたと思う。

 しかし、ボランティアには、どうにもできないこともある。その重みを感じざるを得なかった。
 
 山田宏哉記

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 2011.6.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ