ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3006)

 震災ボランティアの戦友たち 床下泥出し・清掃篇

一昨日(2011年6月26日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

 10:30〜15:15 個人宅の床下泥出し・清掃

 この日、Tさんと待合せてボランティアセンターに行くと、募集中の案件の要請を受けた。港湾地区の近くの個人宅の泥出し作業だった。

 リーダーを務めるIさんは、会社の部下3人を引き連れてやって来ていた。これに石川県から日帰りで来たMさんが加わり、計7名で現場に向かった。

 Iさんは民間企業の管理職でもあったが、リーダーとして本当に素晴らしかった。北茨城市在住で、宮城でもボランティア活動をしてきたそうだ。何より休日に部下を震災ボランティアに引き連れて来る、というのは、人としての器がないと絶体に無理だと思う。

 Mさんは石川から片道6時間かけてやってきた。油圧ショベル等の建機で有名な企業に勤務していて、「復興に向けて、建機を大増産中」だと言った。災害ゴミの仮置場ではMさんのメーカーの重機が稼働中で「うちの製品が活躍している」と誇らしげだった。

 僕たちのチームは、全員社会人だった。Iさんは「怪我をしないこと、無理をしないこと、本業に差し支えないようにすること」などの注意喚起をし、作業前に全員の自己紹介をした。自分がリーダーを務めた時以外、自己紹介をしてから作業したのは初めてだった。

 Iさんのようなマネジャーの下で働ける部下は恵まれていると思うし、Mさんのように本業が復興に直結しているのも、素晴らしいと思う。

 現場の家には、一階部分の天井近くまで津波が到来していた。解体するか否かは「保留」だった。

 既に床板を剥がし、浴槽やトイレは廃棄物として搬出されていた。床下の泥を出し、清掃し、石灰を撒くのがこれからの流れだった。現場には津波の匂いが染み付いていた。

 まず、前回までの作業で泥を詰めた土嚢袋をMさんのワゴン車に積み、災害ゴミの仮置き場に運んだ。日曜の朝ということもあって、集積場前には廃材を積んだ車が列をなしていた。

 土嚢袋の中身を集積場に捨てるだけの作業に予想以上の時間がかかった。ちなみに、Iさんによると今、ブラウン管TVが大量に"災害ゴミ"として廃棄されている、という。

 集積場から現場に戻ると、既に昼時になっていた。僕たちは依頼者宅の倉庫にダンボールを敷いて昼食にした。

 地元の方の話によると、直後から、被災地では火事場泥棒が頻発したようだ。余震により、警察や自衛隊が「津波が来るぞ、避難しろ」と住民に声をかけると、逆走して住宅地に向かうグループに出くわしたという。

 昼食を食べ終わると、Iさんは部下たちに「寝れるときに寝なきゃダメだ」と言って、昼寝をした。

 僕はいつものように散歩に出かけた。瓦礫は片付いてはきているものの、 まだまだ手付かずのところが残っていた。

 また、近所で山崩れが発生していたが、崩れたまま放置されていた。よく見ると、依頼者宅の裏山も、急斜面の山肌が露出して危険な状態だった。

 午後は、電源系統にラップなどを巻いて防水にし、水を撒いての清掃とした。Iさんが汚れた部分に水をかけ、僕はデッキブラシで汚れを擦り落とした。

 一階部分が大方終わる頃、ちょうど作業終了の時刻となった。多少無理をすれば石灰を撒くところまでいけたと思うが、「清掃後、自然乾燥させた方がよい」という判断だった。

 この日の作業はこれまででも、これからも全員が震災ボランティアを続ける。平日は社会人として働きながら、週末は被災地に駆けつける。そういう人が数多くいることが何よりも心強い。

 震災後、被災地には窃盗団が押し寄せ、原発事故で福島県民は差別され、街には瓦礫が散乱したままで、福島は放射性廃棄物の最終処分場となり、被災者の再就職先は月給15万円以下。

 それを「黙って見ていろ」というのか。たぶん、僕たちはそういう気持ちを共有している。

 チーム解散後、僕はMさんの車に乗せて頂いて、駅まで送ってもらった。僕はMさんに沿岸部の津波被害の実態を見てから石川に帰ることを強く勧めた。

「また、どこかで」。そう挨拶してMさんと別れた。

「また、どこかで会いましょう」。具体的な約束はないけど、それが僕たちの合言葉だ。
 
 山田宏哉記

【写真】福島県いわき市小名浜。本文とは関係ありません。


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 2011.6.21 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ