ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3009)

 震災ボランティアの戦友たち 食品工場清掃篇

 昨日(2011年7月2日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

 10:30〜14:45 食品工場の側溝清掃

 募集された作業メンバーは6名。応募者の中では、僕が一番経験があったので、現場リーダーを務めた。

 メンバーのうち2名が、原発20km圏内に職場がある地元の方だった。震災ボランティアに参加するのは今回が初めてとのことだったが、津波被災者や原発避難者と非被災地の人の時間軸は、相当ずれてしまっていると感じる。

 現場となった場所は、震災後、1ヶ月ほど停電。火事場泥棒にも多数入られた地区で、今でも地元の人が"警備"して一般車両の通行を規制している。報道等によると、600戸あった家のうち、500戸くらいが流されたらしい。

 持参した資材は、角スコップ5本、バケツ4個、土嚢袋300枚など。必要な資材は予め用意された書面に記載されているものの、抜け漏れが多く、あまり当てにならない。

 側溝の泥出しをするなら、大きさが異なるスコップを持参するのは必須だ。一輪車は、車に積むことができなかったので、依頼者に貸して頂いた。

 ブルーシートも追加。ブルーシートは汚れた資材を車に積んだり、昼食を食べるときに地面に敷いたりと、多面的な使い方ができるので、あるなら常に持っていきたい。

 必要な資材を持っていかないと、仕事にならないことは案外ある。依頼内容から必要な資材を判断するのは現場リーダーの責任で、ここで躓くのは何としても避けたかった。

 依頼主の話によると、停電で電気が使えなくなり、冷蔵庫の中身が腐り始め、匂いやハエで大変なことになったそうだ。5月の連休頃からボランティアが継続して入っていて、大方片付いていた。工場裏の側溝を清掃すれば一段落付くということだった。

 震災当日、津波で流された人が、依頼主の家の窓を突き破って入ってきたという。その方は生存していて、この日、依頼主さんと挨拶をしていた。津波に呑まれて流されても、諦めないことが大切だとわかる。

 僕たちは「側溝を水が流れるようにする」ことを目標に据えた。

 作業分担としては、僕以外のメンバーが側溝の泥上げをして土嚢袋につめたものを、僕が一輪車で所定の場所に運んだ。正直、僕もスコップを持って側溝の泥出しをしたかったが、作業の進捗やメンバーの様子を眺めるという意味では、運搬係でよかったと思う。
 
 作業は当初、1時間くらいで終わるかと思っていたら、見積もり以上に側溝に泥が溜まっていて、時間がかかった。また、僕は一輪車に5,6個の土嚢袋を乗せて運んだが、これだと運搬が追いつかず、土嚢袋が溜まる一方となった。

 日中、気温が上がり、作業はより過酷になった。匂いも若干、きつい所があった。水は500mlのペットボトル2本を飲み干してしまったが、幸い、ボランティアセンターからの差し入れがあって助かった。

 昼休みは工場の外にブルーシートを敷いて昼食にした。簡単な自己紹介をして、僕はいつものように散歩に出かけた。

 一見、"空地"のように見えるのは、大抵、元々は家があったところだった。防波堤が決壊しているところには、応急のものが設置してあった。砂浜には手漕ぎボートが埋まっていた。

 昼食後も延々と同じような作業が続いた。

 雨水排水溝のフタを持ち上げ、その下の泥を掻き出すと、ようやく水が流れるようになった。仕上げとして、側溝周りを含めて水で洗い流し、作業完遂。

 依頼者とも今後のことを相談し「一旦、これで作業終了とし、何かあればまた別途依頼する」ということにした。

 震災ボランティアを始めた頃には、「自分たちの手で、物事を前に進めた」という感触が何より大切だ。メンバーの顔色から判断すると、この感触は得られた。

 もっとも、側溝清掃の汚れは酷く、千葉の船橋から来た方は、相当に作業着が汚れてしまったため、巨大なビニール袋に包まって乗ることになった。僕もトランクに乗せてもらおうとしたが、好意に甘え普通の座席に乗せてもらった。

 帰りの車中、満足気なメンバーとは裏腹に僕は別のことを考えていた。

 今の場所で、約2ヶ月、震災ボランティアの経験を積んだ。そろそろ、より負荷の高い地域で活動するべきではないか。そんな思いが込み上げていた。
 
 山田宏哉記

【写真】福島県いわき市豊間。本文とは関係ありません。



【関連記事】
震災ボランティアの戦友たち 床下泥出し・清掃篇 (2011.6.29)
震災ボランティアの戦友たち 全壊地区の現場リーダー篇 (2011.6.21)
震災ボランティアの戦友たち 原発25km地点の瓦礫撤去篇 (2011.6.20)
震災ボランティアの戦友たち リーダーの責任篇 (2011.6.13)
震災ボランティアの戦友たち 豚小屋解体篇 (2011.6.12)
震災ボランティアの戦友たち 被災家具合法投棄篇(2011.6.6)
震災ボランティアの戦友たち 側溝/ドブ川泥掻き篇(2011.6.5)
震災ボランティアの戦友たち 避難所清掃篇(2011.5.29)
震災ボランティアの戦友たち 合同葬儀準備篇(2011.5.28)
震災ボランティアの戦友たち いわきの夜篇(2011.5.22)
震災ボランティアの戦友たち 被災家具搬出篇(2011.5.21)
震災ボランティアの戦友たち 床下浸水対応篇(2011.5.15)
震災ボランティアの戦友たち "災害ゴミ"運搬&ガレキ撤去篇(2011.5.14)
福島県南相馬市での震災ボランティア体験記(2011.5.5)


Tweet

 2011.7.3 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ