ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3015)

 原発作業員から透けてみえる日本社会

 福島第一原発の事故に関して、一般には「東電が下請けの作業員たちをこき使っている」というイメージがある。

 原発作業員がよく来るお店のマスターに話を聞いたところ「元請けのゼネコンが東電から毟り取っている」というのが実態とのことだった。東電は原発事故で既に満身創痍のため、ゼネコン側の要求を飲むしかない、という。

 ちなみに、原発作業員が一番きついのは「6時間、トイレに行けないこと」らしい。お店でも仕事の前日は、少食で殆ど水分を取らない、とのこと。原発作業員がよく熱中症になる原因は「トイレに行けないため、水分補給をできない」からのようだ。

 実話系の雑誌には、ライターの鈴木智彦氏が原発事故後に福島第一原発に潜入した記事が掲載されている。記事には、ヤクザのツテで福島第一原発の仕事を紹介してもらったと書いてあった。

 「ヤクザが原発作業員を掻き集めている」というのは、"昔はそんなこともあった"というレベルの話ではなく、今の今でもそうなのだ。

 普通の人なら、「わざわざ原発事故の現場で働きたい人など、いるだろうか」と思うだろう。
 
 結局、世の中は表向きの行政サービスだけでは成り立たず、だからこそ、ヤクザのシノギが成立する。「死活問題だが、自分ではやりたくないこと」というのは、確かにある。借金の取立てなどは、その典型例だ。

 原発事故以後の原発作業員の確保も、まさに「死活問題だが、自分ではやりたくないこと」のひとつだ。

 「釜ヶ崎(あいりん地区)の浮浪者を半分騙して、福島第一原発の作業員として送り込む」みたいな汚れ仕事は行政にはとてもできない。でも、誰かがそれをやるし、僕たちもそれを黙認している。

 「原発作業員と連絡が取れない」みたいな報道もなされているが、ヤクザが原発作業員を掻き集めている以上、不思議でも何でもない。それが釜ヶ崎の浮浪者だったら、連絡が取れなくても当然だろう。

 尚、鈴木智彦氏の推測では、ヤクザが高給で福島第一原発の作業員を募集できる理由は、「後から、放射線被曝による身体的・精神的苦痛を理由に東電をゆする」ことができるから。いずれにせよ、ヤクザもまた、東電の補償金を狙っているようだ。

 これを批判するなら、まず自分が原発作業員に志願するべきだろう。

 「現場の原発作業員、頑張れ」と思うのは間違いではないし、まさにその通りだ。その一方、ヤクザが原発作業員を掻き集めているという話も、日本人なら知っておいた方がいいと思う。

 世の中はそれほど単純ではないのだ。

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 山田宏哉記

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 2011.7.17 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ