ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3016)

 震災ボランティアの戦友たち 側溝蓋の開閉篇

 一昨日(2011年7月18日)、福島県のある市町村で震災ボランティアをした。

 10:30〜15:15 側溝清掃

 この日の朝、ボランティアセンターに行くと、側溝清掃の募集が追加で3名かかったので、すかさず挙手。メンバーには以前一緒に作業をした地元のTさんとKさんがいた。継続的に通っていれば、こういうこともある。

 Tさんは、例の「依頼者を間違えて、隣の家でボランティア作業をしてしまった」ときのメンバーだ。僕たちは苗字を聞いただけで、依頼者本人と錯覚し、別のお宅で作業をしてしまった。

 但し、笑い話として随分と使うことができ、この経験は非常に貴重だった。Tさんは今も「雨の日以外は、大抵毎日、ボランティアをしている」という。

 現場は海のすぐ近くで、脇にあった保育園は全壊したか、解体されていた。連日、ここで集中的に側溝を清掃している、という。

 川の向こう側には高校があったが、堤防が決壊し、川が校庭を浸食していた。そこで野球部員たちが練習をしていた。

 側溝を清掃する時の一般的な手順は、まず速攻蓋を開け、スコップで汚泥を掻き出し、最後に側溝蓋を閉じる、となる。

 僕は主として側溝の蓋開けと蓋閉めを担当した。

 まずは側溝の蓋を開けないと仕事にならないため、僕たちは次々と蓋を開けていった。1個2個なら平気でも、10個20個と数を重ねるにつれ、だんだんきつくなってきた。昨日、この作業をした男性2人は「腰がおかしくなった」と言っていた。

 側溝の蓋は、ひとりの人間の力で持ち上げるのは厳しい。男性2人がかりでも、手で持ち上げるのはきつく、誤って指を挟んだら非常に危険だ。

 そのため世の中には、テコの原理を利用した側溝の蓋開け機が存在する。これを使えば、感覚的には20kgくらいのモノを持ち上げるくらいの力で、側溝の蓋を持ち上げられる。

 夏の直射日光を受けながらの作業のため、汗で水分が急速に失われた。1.5Lの水を持参して挑んだが、それだけでは足りず、合計2〜3Lの水分を補給した。現場にはトイレがなかったが、それでも作業中はトイレに行きたくならなかった。

 昼休みはいつものように浜辺の波打ち際を散歩した。安全用の長靴を履いているので、10?20センチくらいは波に浸っても問題ない。普段から波が高い場所で、さほど風がないのにテトラポッドが水しぶきをあげていた。

 昼休み中、浜辺に座って波を眺めていたら、午前中の消耗が激しく、いつのまにか寝てしまった。

 蓋の開閉をしていない間、多少はスコップで泥を掬ったり、土嚢袋の運搬作業をした。メインの仕事であるスコップでの泥掻きは、一番負荷が軽かった。

 午後になると、現場には十数名の次々と応援部隊が支援に来たため、総勢約70名で作業することになった。
 
 午後も後半になると、数十kgの蓋を繰り返し持ち上げるのがきつくなってくる。僕たちは自ずと「蓋10個で持つ人を交代」みたいなルールを作って、特定の人に負荷が集中し過ぎないようにした。

 また、側溝蓋は、開ける時よりも、閉じる時の方が難しかった。蓋と蓋の間の隙間を調節しないと、開けた蓋が入り切らなくなったり、車のタイヤが側溝にハマるようなことになってしまう。職人の世界では、蓋と蓋との隙間の調整を「あたり」と呼ぶようだ。

 側溝清掃は、蓋開けに始まり、蓋閉めに終わる。

 この日の作業範囲で最後の蓋がピタッとはめると、何故か拍手が沸き起こった。

 この現場の側溝清掃は3日連続で続いていて、これからも続いていく。それでもこの日の作業に充実感を感じた人が多かったようだ。

 帰りの車中、Tさんと雑談した折、「5月6月に比べると、深刻な依頼内容は減ってきている」ということで意見が一致した。この辺りは福島の中では首都圏からも比較的ボランティアに来やすい。「もう大丈夫だろう」と思うと嬉しい反面、少し寂しさも感じた。

 山田宏哉記

【関連記事】
震災ボランティアの戦友たち 土嚢袋運搬篇 (2011.7.15)
震災ボランティアの戦友たち 食品工場清掃篇 (2011.7.8)
震災ボランティアの戦友たち 床下泥出し・清掃篇 (2011.6.29)
震災ボランティアの戦友たち 全壊地区の現場リーダー篇 (2011.6.21)
震災ボランティアの戦友たち 原発25km地点の瓦礫撤去篇 (2011.6.20)
震災ボランティアの戦友たち リーダーの責任篇 (2011.6.13)
震災ボランティアの戦友たち 豚小屋解体篇 (2011.6.12)
震災ボランティアの戦友たち 被災家具合法投棄篇(2011.6.6)
震災ボランティアの戦友たち 側溝/ドブ川泥掻き篇(2011.6.5)
震災ボランティアの戦友たち 避難所清掃篇(2011.5.29)
震災ボランティアの戦友たち 合同葬儀準備篇(2011.5.28)
震災ボランティアの戦友たち いわきの夜篇(2011.5.22)
震災ボランティアの戦友たち 被災家具搬出篇(2011.5.21)
震災ボランティアの戦友たち 床下浸水対応篇(2011.5.15)
震災ボランティアの戦友たち "災害ゴミ"運搬&ガレキ撤去篇(2011.5.14)
福島県南相馬市での震災ボランティア体験記(2011.5.5)


Tweet

 2011.7.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ