ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3024)

 "給料に見合った仕事"をするということ

 「給料に見合った仕事をしているか」と問われると、答えは「ノー」と言わざるを得ない。

 僕は単に日本人というだけで、英語もロクに喋れないのに、不当に高い報酬を得ていると思う。わざわざ自分から給料を返上する程のお人好しではないが、そういう自覚は持っている。

 新興国の優秀な若者なら、年収2万ドルでも、僕とほぼ同等の仕事を喜んでやると思う。僕が経営者なら、日本人よりも新興国の若者を優先的に採用するだろう。

 日本では「正社員と非正規社員の賃金格差」ばかりが問題になるが、より重要なのは「日本と新興国の賃金格差」の方だ。

 年収500万円の日本人が「こんな仕事やってられないよ」とぼやく仕事を、新興国の優秀な若者たちは年収2万ドルで喜んでやる。この意味を直視すべきだ。

 経済合理性で判断すれば、もはやITや製造業を日本でやる意味は薄い。当然、日本人を雇う必要性も低い。

 対照的に建設業、インフラ系、運送・流通、教育、介護、医療などの土着型サービス業は日本に残らざるを得ない。日本の現地住民を雇うことも必要だろう。

 おそらく日本で働くなら、土着型サービス業を目指した方が良い時代がすぐにくる。もっとも土着型サービス業であっても、あくまで「相対的にマシ」というだけの話で、全体のパイは縮小していく。

 僕が経営者であれば、自分と同レベルの従業員の待遇は「月給16万円、ボーナス・残業代なし」くらいに設定すると思う。これなら雇ってもいい。これでもかなりの高待遇で、少なからぬ人は「報酬\0」でも雇いたいとは思わない。
 
 自分が経営者だったら、今の給料で自分を雇いたいと思うか。たぶん、多くの日本人は、このハードルを超えられない。日本の企業は仕事に見合う以上の給料を支払う慈善団体でもあった。

 しかしもう、日本にそれだけの余裕はない。誰しも薄々気付いているだろう。
 
 震災と原発事故を機に、徐々に日本も「普通の国」になっていくと思う。つまり、優秀な若者は海外に留学し、海外で働くようになる。その能力に欠ける若者たちは、日本に留まり、大半は年収2万ドルの単純労働者として働くことになる。

 いい悪いはさておき、それが僕たちの未来だ。

 山田宏哉記

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 2011.8.4 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ