ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3037)

 震災ボランティアの戦友たち 写真洗浄篇

 先日(2011年8月19日)、福島県のM市(福島第一原発から20〜30kmの緊急時避難準備区域)で震災ボランティア活動をした。

 朝、前日一緒に作業をし、夜、一緒に酒を飲んだTさんと挨拶をした。ホテルの水道管の破裂が復旧したか尋ねたところ、幸い、復旧したようだった。

 この日は、あいにく雨天で屋外作業は中止となり、写真洗浄の他に選択の余地がなくなった。前日の側溝清掃があまりにハードで、内心「2日連続での側溝清掃は避けたい」と思っていたため、丁度良いと思った。、

 Tさんは、GW時に写真洗浄の経験をしていたが、「精神的に疲れる。時間が経つのが遅い」と決して良い印象は持っていなかった。そして、この日、午前中だけ作業をして午後、鹿児島に帰ることになっていた。

 僕たちのやることは、津波で泥まみれになった写真類を洗浄し、展示することで、持主の手に戻るようにすることだった。

 津波で流出した写真類は個人情報のカタマリなので、取扱に注意するようにスタッフから説明があった。厳密に言うと、こういう個人情報を取扱う作業は市の職員が守秘義務等の責任を負ってやるべきで、ボランティアにやらせるのはあまり望ましくはないと思う。

 この写真洗浄は写真撮影は厳禁だったが、ツイッターで流出物に記載された個人情報をツイートしたボランティアがいて、問題になったそうだ。

 僕たちは、ボランティア・センターから歩いて数分の施設に移動し、そこで作業をした。ブルーシートを敷き詰めた床の上に長机を並べ、さらにその上にダンボールを敷き、椅子に座って作業をした。

 写真の汚れは、ブラシとウェットティッシュで丁寧に擦って落とした。

 とはいえ、洗浄には限界があり、インクが溶けて滲んでいる部分や破れている部分はどうしようもなかった。写真は縁の方からインクが溶け出していて、中央部は無事であることが多かった。

 また率直に言うと、他人の全くの私生活を切り取った写真をみるのは、「覗き」をしているみたいであまり気持ちの良いものではなかった。

 津波で流された写真の中に映っている人物が、震災で「何事もなかった」とは考えにくい。津波に呑まれて死亡した可能性は排除できないし、そうでなくても家は全半壊した可能性が高い。泥まみれの写真はそんな方々の「幸せだった頃の記憶」を写し出していた。 
 昼休み、Tさんが「他人のプライベートの写真を見る趣味ないし、辛気臭くなった」と言った。僕もほぼ同感だった。あまり気分の良いものではない。但し、適性としては「他人のプライベートを覗く趣味はない」という人の方が向いていると思った。

 昼休み、コンビニで弁当を買って、ボランティアセンターで食べた。前日、中学校の体育館で泊まったメンバーに居心地を訪ねたら、「何の問題もない」とのこと。それを聞いた若い女性も宿を取らずに来たので、体育館宿泊に興味を持ったようだった。

 宿泊場所をどうするかは切実な問題ではある。1泊¥5,000くらいのビジネスホテルが複数あるし、ウェブに掲載していないホテルもある。それでもダメなら、体育館。最悪でも、野宿は避けられるようになっている。

 食事後、Tさんを見送り、午後はTさんの途中まで洗浄作業した写真を引き継いで作業をした。

 僕は作業終了時間まで写真の洗浄を続け、切りのいいところまで仕上げた。達成感よりも、「ホッとした」というのが率直な感想だった。正直なところ、「またやりたい」とは思わない。Tさんが午前中で切り上げて帰った気持ちがよくわかった。

 写真洗浄は体力はさほど必要しないので、体力に自身のない人がする場合が多い。それでも、向き、不向きはある。僕には「不向き」だったし、一般に過酷な力仕事に打ち込むタイプの人には、あまり向いていないように思った。

 山田宏哉記

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 山田宏哉記

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 2011.8.22 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ