ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3046)

 震災ボランティアの戦友たち 転機篇

 当初、震災ボランティアの経験は、「1日だけ」のつもりだった。5月4日、南相馬での救援物資の仕分けをして東京に戻り、また日常に戻るつもりだった。

 大型連休中、被災地の実情を目の当たりにし、震災ボランティアも経験した。これで充分、「自分にできることはした」と感じていた。それでも、釈然としないものが残った。

 5月6日、連休の谷間に出勤した。首都圏と被災地とのギャップには、強烈な違和感を覚えた。首都圏では、震災は既に「過去の出来事」になりつつあった。連休後は、ボランティアの数が足りなくなるという報道もあった。

 色々な思いが去来した。

 僕は20代でベストを尽くせなかった。そのことは、自分が一番よく知っていた。そして今、またチャンスをみすみす逃そうとしている。

 以前、ある方に言われた言葉がフラッシュバックした。「君は自分に自信を持っているようだが、これまでに何を成し遂げたと言うのか。何もないじゃないか。世の中には、君より立派な人がたくさんいる」

 南相馬での体験は、確かに直接的な手応えを感じた。その手応えは、再び追い求める価値があるもののように思えた。それを「その場限り」で終わらせるつもりなのか。

 転機に立ったとき、いつも自分に問いかける言葉がある。

 「このままでいいのか、いけないのか」

 僕は毎週末、福島で瓦礫撤去をすることに決めた。今度は1人で行く。当然、全額自費で。

 これは自分の能力の限界への挑戦でもあった。

 東京から毎週末、福島に行くとなると、当然、時間とお金の問題が立ちはだかった。毎週土日で作業をするとなると、いわき市以外の選択肢はなかった。

 幸い、いわき市では飛び入りでボランティアセンターに行けば作業を紹介してもらえる仕組みになっていた。

 東京駅からいわき駅まで、電車だと片道\5,500。高速バスの回数券を使えば、その半額の値段になる。

 いわき駅前のビジネスホテルは、予約が一杯で取れない傾向があったため、1ヶ月以上先の分までまとめて宿泊予約をした。経費節約のため、金曜の夜はネットカフェに宿泊することにした。

 また、作業着を持っていなかったので、川崎の作業用品店で購入した。この時、釘等の踏み抜き防止のための安全靴も改めて購入した。「これで福島で戦える」という実感が得られた。

 さらに荷物を入れるための大型のリュックサックもなかったので、これを機に購入した。これで装備は揃った。

 5月12日の夜、福島行きの荷造りをしながら、ふと「人生は輝いている」と思った。これからは、土日も休むことなく働くことになる。それを踏まえても尚、一筋の希望がみえた。

 人生最良の日々。そんな予感がしてならなかった。そしてこの予感は、間違っていなかった。

 山田宏哉記

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 山田宏哉記

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 2011.9.10 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ