ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3055)

炭鉱から原発へ 福島県いわき市/石炭・化石館探訪記

 先日(2011年9月11日)、福島県いわき市の石炭・化石館を探訪した。



 JR湯本駅から徒歩で約10分。この辺りはかつて常磐炭鉱があった場所だ。福島第一原発の事故以降は、原発作業員が宿泊する温泉街としても、知られるようになった。

 震災では、住宅街に隣接する常磐炭鉱跡から、"温泉"が噴出したりした。

 炭鉱の街から原発作業員の街へ。恥ずかしながら、これまで僕は常磐炭鉱の閉鎖と福島第一原発の建設のあいだに密接な関係があることに気付かずにいた。

 福島県は近代日本のエネルギー供給源だった。

 19世紀後半、常磐炭鉱が注目され、採掘される石炭を輸送するため、常磐線ができた。

 第二次大戦後、石炭よりも石油の方がエネルギー源として優勢になる。常磐炭鉱が次々と閉山する中、いわき市が誕生(1966年)し、福島第一原発の着工が始まった(1967年)。

 福島で雇用を確保するには、「炭鉱から原発へ」という転換が必要だった。

 石炭化石館は、常磐炭鉱関連の展示が非常に充実している。

 敷地の一角の昭和の杜には、1947年の昭和天皇来訪を記念して作られた石碑がある。「あつさつよき磐城(いわき)の炭山にはたらく人ををゝしと見し」という碑文が彫られていた。昭和天皇は炭鉱の中に入って、直接従業員たちを激励したようだ。



 炭鉱夫たちが石炭を掘る様子の展示も圧巻だった。個人的にちょっと驚いたのは、炭鉱で働いていたのは男性だけかと思ったら、手で掘っていた頃は、女性も働いていたことだ。しかも上半身裸で。



 発電方法についても、認識を改めさせられることがあった。

 世界の電力供給においては、1位石炭火力、2位天然ガス、3位水力、4位原子力、5位自然エネルギーと続く。シェアは1位の石炭火力が圧倒的で、全発電量の約半分を占めている。電力供給を議論するなら「火力発電をどうするか」が最重要のテーマであるはずだ。

 実は「原発か、自然エネルギー発電か」という問の立て方そのものがおかしい。どちらも世界では主流の発電方法ではない。

 世界のエネルギー源は今でも石炭による火力発電が中心で、 これは少なくとも21世紀の中盤までは変わらないと予測されている。電力に関して最も大切なのは、環境負荷の少ない形で火力発電をやることだ。

 いわき市石炭・化石館探訪。地元の方も勧めていたので期待はしていたが、期待以上の充実度だった。福島県いわき市に来たら、ぜひ行くべき場所のひとつだ。

 山田宏哉記

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 2011.10.2 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ