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 サイバー・ラボ・ノート (3056)

 瀧本哲史(著)『僕は君たちに武器を配りたい』覚書

 瀧本哲史(著)『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社)を読んだ。

 本書の核となるメッセージを要約すると「資本主義の本質を理解せよ。コモディティ化(安売り競争)を回避し、スペシャリティ(唯一性)を獲得せよ」となると思う。

 資本主義の世界では、人々は同じスペックならより安い商品を求め、同じ価格ならより品質の高いものを求める。重要なのは、これが「人材」にも当てはまることだ。

 以下、僕の気付き事項。

 「2人の石切り職人」という寓話がある。旅人が「あなたは何をしているのか」と2人の石切り職人に尋ねたところ、1人は「石と格闘している」と答え、もう1人は「教会をつくっている」と答えた。「仕事の先に何を見るか」を問う寓話である。

 本書を参考に「7人の石切り職人」の寓話を考えてみる。旅人は7人の石切り職人に尋ねた。「あなたはどうやって生計を立てているのか」。

1人目は答えた。「何も考えず、親方の言う通りに作業をして、賃金をもらっているのさ」

2人目は答えた。「切った石を別の場所に運んで、売っているのさ」

3人目は答えた。「他人より腕を磨いて、専門技術を身につけ、効率よく石を切っているのさ」

4人目は答えた。「誰も見向きもしないその辺の石に、付加価値を付けて売っているのさ」

5人目は答えた。「石を切る仕組みを作って稼いでいるのさ」

6人目は答えた。「リーダーとして、他の石切り職人のマネジメントをしているのさ」

7人目は答えた。「石切りという事業に投資しているのさ」

 さて、グローバル化が進み、資本主義の世界が広がる中で、誰が低収入に甘んじ、誰が高収入を得ることができるのか。

 まず、容易に想像がつくのが、1人目が低収入になること。「代わりはいくらでもいる」というのが、この働き方の特徴だ。

 2人目はどうか。従来は、この働き方で活躍できた。しかし、今後は厳しい。ウェブの普及により、物理的な距離はあまり経済的な価値を持たなくなってきている。

 3人目はどうか。これも、従来はこの働き方が通用した。今でも、専門性やスキルアップが収入の増加に繋がると考えているビジネスパーソンは結構いる。

 結論から言うと、3人目も「落ち目」だ。

 「資格」が就職やキャリアアップの鍵になると考えるのは痛い。普通はここで「資格ではなく、実務経験が重要だ」となるが、僕は「それも違う」と思うようになった。私見では、「○○の分野に詳しい」ことそのものが、あまり売りにはならなくなっている。

 厳しい世界では、技能の高さは「売り」にはならない。重要なのは、実績だけだ。この話は非常に重要なので、別の機会に解説したい。

 従って、資本主義の世界で高収入を得られるのは、4人目から7人目の石切り職人となる。

 目指すべきは、マーケター、発明家、リーダー、投資家であり、いくつもの顔を使い分け、成果を出すことだ。

 エキスパート(専門家)であるか否かは、あまり重要ではない。むしろ専門家はアウトソーシング(外注)の対象で、買い叩かれる側になる可能性の方が高い。

 強いて言うなら、資本主義の世界で活躍できる基幹人材とは「仕掛けを考え、マネタイズ、マネジメント、投資判断ができ、結果を出せる人」だろう。

 なぜなら、このレベルに達して初めて、組織にとって欠かせない存在と言えるのであり、「余人をもって代えがたい」と評価できるからだ。

 いずれにせよ、非常に読み応えのある書籍だった。

 山田宏哉記

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 2011.10.5 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ