ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3057)

 増田不三雄(著)『社内失業』覚書

 増田不三雄(著)『社内失業』(双葉新書)を読んだ。著書自身が社内失業状態で「本人には責任がない」という主張で貫かれている。

 社内失業は、構造やマネジメント、教育ノウハウの欠如などの問題であることが多々ある。もっと直接的に言うと、「上司に恵まれない」ことで起きがちだとわかる。

 確かに世の中には、部下の積極的な提案を喜ぶマネジャーと嫌がるマネジャーがいて、前者の下で働くのは気持ちがいい一方、後者の下で働くのはきつい。

 著者の主な業務は、郵便の宛名書きとファイル整理のようだ。そして、このような仕事では「スキルが磨けない」という。確かに作業だけを見れば、学生アルバイトにもできそうに思える。

 でも、実は僕は「スキルを磨ける複雑な作業」と「スキルを磨けない単純作業」があるわけではないと思っている。

 郵便の宛名書きを、単なる「雑用」と捉えるのか。郵便物の誤送付や誤封入は、どのような企業にとっても付き纏う問題で、人間が手作業をする限り、どうしてもミスは起きる。誤送付も、内容によっては深刻な問題に発展する可能性もある。

 学生アルバイトであればともかく、ビジネスパーソンであればここで考えるべきことがある。

 例えば、「そもそも、郵便物で送る必要があるのか」という点と「"宛名をよく確認する"以外に、誤送付を防止する仕組みはないか。誤送付をしたとしても、どうすれば被害を最小限に抑えられるか」という点だ。

 更に攻めの姿勢を取るなら「販促のために、同封するとより効果的な資料はないか」と考えることも必要だろう。

 ファイル整理にしても同様で、漫然とやっているようでは単なる「雑用」だ。

 しかし、ファイルに収める文書を精査し、抜け漏れや内容面の不備がないかをチェックしたり、理解しやすいように順序を並び替えたり、電子化してオフィスで文書保存のために使われているスペースの圧縮を検討したりはするべきだろう。

 更に攻めの姿勢を取るなら、「オフィスのペーパーレス化運動」を提案して、その指揮をとるのもありだ。

 社会人であれば、これくらいは「やって当たり前」だ。但し、これくらいのレベルのことが「当たり前」と思えるようになるには、やはり一定の実務経験が必要ではある。

 現実問題として、仕事がないと、その期間は腕が磨けないし、転職も難しくなる。誰かのせいにしている場合ではない。

 では、仮に僕が「会社に出勤してもやることがない」となったら、どうするか。

 僕ならまず、自分の会社が抱えている問題点をリストアップする。そして、この問題点を解決していくのを、勝手に「自分の仕事」にしてしまう。

 会社の問題点を洗い出すには、まず「会社の仕組みとビジネスモデル」を理解することが重要だ。企画、営業活動、納品、広告、販売といったフローをキチンとみると、何かしら問題があるはずだ。何も問題がなければ「朝行っても仕事がない」などということにはならない。

 もちろん、問題点をリストアップしたからといって、自分の力で解決できるものばかりではない。だから、自分の力で対処可能な問題から手掛けていく。

 もっとも、現状の問題点をリストアップして、次々と解決していくのは、別に社内失業をしていなくても、やった方が格段に腕が磨ける。

 何より、「会社の仕組みとビジネスモデル」を深く理解していれば、いざ「朝、出勤したらやることがない」という状況に陥っても、打つ手はあると思う。何より、「転職すべきか、留まるべきか」の判断を間違えるリスクを減らすことができる。

 思うに「上から降ってきた仕事に対処する」という仕事の進め方では、いざ上から仕事が降ってこなくなったとき、社内失業になってしまう。

 そのためにも、普段から「やるべきこと」と「やった方がいいこと」は多めにリストアップしておいた方がいい。僕は、忙しいときは「やるべきこと」に集中し、時間が空いたときに「やった方がいいこと」に着手している。

 いずれにせよ、社内失業は対岸の家事ではない。日本全体の仕事量が減る中で、この問題は今以上に深刻になっていくだろう。

 山田宏哉記

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 2011.10.9 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ