ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3071)

 報復と寛容のあいだ

 ここ1ヶ月くらい、半年以上前のある事柄について、「報復するべきか、否か」で、葛藤を繰り返している。

 日常生活で僕と接している人は、大方、知っていると思う。また、僕の書くものを注意深く読んでいる人は、既に感づいていると思う。

 便宜上、「ティッシュペーパーの濫用」と記すが、これにより受けたダメージは大きく、端的に言って、僕は自分のキャリアを棒に振ることになった。

 ティッシュペーパーの濫用者にとって誤算だったのは、たぶん、僕がまたゼロからやり直して、圧倒的な成果を出した点だと思う(僕を拾ってくれる方がいたのはとてもありがたかったし、この恩は絶対に忘れない)。それでも、随分と惨めな再出発だった。

 人生が狂ったのだ。個人的には「裁判を起こしてもいいレベル」だと思っている。しかし、個人的なことで、事を荒立てるのは好きじゃない。

 半年が経ち、僕は高い評価を得て、相手は面目と信用を失った。

 既に勝負は着いている。僕が勝ち、相手は負けた。これは「敗者の処遇」の問題なのだ。

 今僕は、働くための環境が劇的に改善され、仲間にも恵まれ、チャレンジングな仕事を手掛けられるようになった。だから、現状には不満がない。結果的にはこれで良かった。
 大人なら「これで良し」とするべきじゃないのか。そんな風にも思う。

 過去のしこりにどう決着を付けるのか。報復するのか、あるいは水に流すのか。

 この半年で、立場は逆転した。生殺与奪の権を持つ側も入れ替わった。「今までの恨み」を晴らそうと思えば、晴らすこともできるだろう。勝者は敗者にどこまで寛容であるべきなのか。

 たぶん、僕が仲間に味方になってもらって、正式に抗議すれば、全てが終わる。ただ、「敗者に止めを刺す必要があるのか」という点で、僕にはどこかためらいがある。

 敗者に辛く当たるようでは、相手と同レベルではないか。

 「結果良ければ全て良し」とするのか。それとも、あくまで過去にこだわり相手に謝罪を要求し、ケジメを付けてもらうのか。人格者あるいは大人の男なら、どうするものなのか。そこで延々と葛藤を繰り返してきた。

 思えば、相手は気の毒な人だった。仕事そのものは嫌いだが、権力欲だけは旺盛だった。慢性的な睡眠不足により、話が少し複雑になると理解できず、実質的には単純作業しかできなくなっていた。

 僕が正式に報復しなくても、多くの人がティッシュペーパーの濫用がなされたことに既に気付いている。僕も仲間には口頭レベルで既にその話をしている。ティッシュ濫用で失った信用を取り戻すのは不可能に近い。

 ちなみに相手は去年の11月から「監視目的」で僕のウェブサイトにアクセスしていた。このこと自体、抗議しても良い話だ。

 ところが、数ヶ月前からめっきりアクセスがなくなった。きっと精神衛生上、耐えられなくなったのだろう。

 そんなことを考えていたら、ふと選択肢は「報復するのか、水に流すのか」の二者択一ではないと気付いた。

 「抑止力として使う」という手がある。 相手が自ら正式な謝罪してこない限り、事ある度にチラつかせて、睨みを効かせて釘を刺す。「相手の弱み」のカードをすぐに切るのはもったいない。

 もちろん、相手が再びティッシュペーパーをチラつかせたら、僕は即座に致命的な一撃を加える。証拠付きで。

 相手は僕のウェブサイトにアクセスして「監視」しているつもりだったのだと思う。しかし、今度は逆にこちらが「監視」させて頂くことにしよう。ティッシュペーパー濫用のカードをチラつかせながら。

 この対応が、厳しいか、寛容か。評価は分かれると思うが、これが僕の「敗者への処遇」だ。

 でも、本当はわかっている。集中するべきは、あくまで自分の仕事で成果を出すことだ。 

 「報復したい」と感じるうちは、まだまだ相手と同レベルにいる。圧倒的なパフォーマンスを出して、早く相手を「歯牙にもかけない」レベルに達したいものだ。

 山田宏哉記

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 2011.11.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ