ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3081)

 「強さ、鋭さ、温かさ」のキャリア戦略

 世の中で活躍するために必要な要素は、「強さ、鋭さ、温かさ」という3つの言葉に集約される。これは、よく「必要だ」と言われる専門知識やコミュニケーション能力よりも、ずっと大切なものだ。

 この3つの要素について、少し突っ込んで話をしたい。

 重責を背負って仕事をしていれば、プレッシャーで吐きそうになることなど、日常茶飯事だと僕は思う。僕自身、弱かった頃は、仕事の重圧に潰されて、病気になって入院した。

 実社会で働く上で、ストレス耐性は絶対に必要で、重圧でパフォーマンスが落ちるタイプの人には、重要な仕事は任せられない。但しこれは、一緒に仕事をしてみないとわからない。

 組織で働く以上、上司に恵まれなくて懲罰人事を受けることもあるし、業績の悪くなった企業であれば「誰を切るか」というシビアな判断もあるだろう。

 もちろん企業は採用活躍の最中に、懲罰人事や首切りの話はしない(当たり前だけど)。でも、社会に出る前の学生が考えている以上に、当たり前にあることだ。「大学で学んだ専門知識を武器に働こう」みたいな呑気な意識では、「負け」が約束されている。

 多くの人にとって、仕事は生活がかかったものである以上、やはり綺麗事では済まない。濡れ衣を着せられて、キャリアを棒に振ることだってある。それでも、戦い続けなければならない。

 ビジネスの極限状況で問われるのは、圧倒的に「強さ」だ。身も蓋もないが「強い者が生き残る」のである。

 「強さ」は必須条件として、選択を迫られるのは「鋭さ」と「温かさ」だ。

 体感的に言って「鋭さ」と「温かさ」はひとりの人間の中で両立することが難しい。鋭さは意識的に磨くというより、「人間味の欠落」から生まれることが多い。「あの人は鋭い」と思われている人は、大抵、人間的には問題がある(僕もたぶんそうだ)。

 補足すると、ビジネスシーンでは、「強さ」と「温かさ」は積極的に発揮してアピールすべだが、「鋭さ」の発揮とアピールには慎重になった方がいい。これは若手ビジネスパーソンが失敗しやすいポイントで、僕も随分と痛い目にあったような気がする。

 おそらく、普通の人にとっては、「強く、優しく」を基本戦略に据え、スパイスとして時折、「鋭さ」を折り込むくらいがいいと思う。「能ある鷹は爪を隠す」という格言があるが、この場合の「爪」は「鋭さ」に相当する。

 自分に「鋭さ」がさほどないと思うなら、「温かさ」にリソースを集中投下したい。人間関係の悩みは大抵、思いやりと寛容の精神があれば、解決する。一方、「鋭さ」を売りにする人は、人間関係で足元をすくわれることが目立つ。

 学校の成績が悪い生徒に、挨拶や立振る舞いの指導するのは、非常に理にかなっている。大半の日本企業では、シニカルな天才よりも、(頭は悪くても)実直な青年を欲しがるだろう。これも「温かさ」にリソースを投下する具体例だ。

 但し、注意を要するのは「温かさ」よりも、「鋭さ」の方が遥かに希少価値が高いことだ。

 だから、人情豊かなコンビニ店員よりも、非情な金融プレイヤーの方が遥かに高い報酬を稼ぐし、そういう経済のあり方は、間違ってはいない。ここは綺麗事では済まない部分だ。

 「鋭さ」にリソースを投下する比率は、「どの程度の報酬を望むか」によって変わってくる。高い報酬を望むなら「温かさ」よりも「鋭さ」にリソースを集中投下する必要がある一方、収入は人並みでいいなら、「温かさ」を大切にすれば充分だ。

 組織内で生き残るために特に必要な要素は「強さ」と「温かさ」だが、報酬と直結するのは「鋭さ」だと僕は思う。閃きやアイディアが高い価値を持つ社会になるほど、「鋭さ」がモノを言う。

 強さ、鋭さ、温かさ。キャリア戦略に合わせて比率の調整をする必要はあるが、人間にとって価値のある価値のある美徳は、時代や老若男女を問わないものだ。

 山田宏哉記

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 2011.12.12 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ