ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3086)

 なぜ、あの人は仕事が遅いのか

 それほど怠けているようには見えないのに、「仕事が遅い人」というのがいる。ビジネスパーソンであれば、誰しも思い当たる節はあると思う。

 「動作の機敏さ」とか「キーボード入力のスピード」といった作業効率の話ではなく、「勤務時間に対して、どれだけの成果(貢献)をしているか」という次元の話だ。

 僕が特に問題だと思うのは、慌しく動き回っているのに仕事が遅い人だ。傍目には一見忙しいのに、成果が全く不十分だと、周囲の人にも悪影響を及ぼす。

 こういう人には主として2つの特徴があると僕は思う。

1.自分の面倒を自分でみられない。

2.「目の前のニンジン」に振り回される。

1.組織で働き、チームに貢献するための前提は「自分の面倒は自分でみる」だ。

 情報システムのパスワードを何度も忘れたり、無くしたらセキュリティ事故になるようなものを、うっかり落としたりする人と仕事をするのは、かなりきついものだ。

 当たり前だけど、何度もパスワードを忘れたり、メールの誤送信をしたり、セキュリティ機器を電車に忘れるような人に、重要な仕事は任せられない。

 「トラブルに見舞われがちな人」というのは、やはり存在する。「大丈夫かな?」と思って眺めていると、大抵、「緊急事態」が発生する。

 本人は「運が悪かった」と思っているようだが、これは運ではないし、運のせいにしてはいけない部分だ。

 自分の不手際によって、そのトラブル対応に追われるのは、バリューのある仕事ではない。本来であれば、その時間分の給料は受け取るべきではないだろう。

 トラブル対応に巻き込まれている時間が多い人は、本来進めるべき仕事の進捗が遅れる。当然ながら、これは「仕事が遅い」ということだ。

2.仕事が遅い人は「目の前のニンジン」に振り回される。

 仕事が遅い人は段取りが悪く、応用が効かず、単発の質問を繰り返し、周囲に迷惑をかける。例えば、以下のような具合だ。

 「Aさんの連絡先を教えてください。Aさんが不在なんですけど、どうすればいいですか。携帯にかけた方がいいですか。では、携帯の番号を教えてください。Aさんは『口頭じゃなくて文面で連絡先して欲しい』と言ってます。ではAさんのメールアドレスを教えてください。」

デスクワークをするなら、メールの各機能の使い方、電話の代理応答や転送の仕方、コピーやPDFの取り方、FAXや郵便、宅急便の出し方、書類や資料の保管場所、ごみの捨て方等、知らぬまま放置せず、一通り押さえておくべきだ。

 バリューの高い仕事を手掛けている時に「PDFの取り方がわからない」とか「燃えるゴミはどこに捨てればいいのか」とか質問されて集中力が切れたときは、本当にやるせない思いになる。

 こういう初歩的なことは、単発で質問されるのでは正直迷惑で、予め時間がある時にまとめて確認しておくべきことなのだ。

 仕事が遅い人には、なかなかそれがわからない。馬と同じで、「目の前のニンジン」のことしか見えていないのだ。

 対照的に仕事が速く、段取りのいい人は「目の前のニンジン」だけでなく、関連してキャベツやキュウリのこと、更には遠くの方に見える野菜にことまで確認する(この時点で既に「情報格差」が生まれていることにも注意するべきだ)。

 仕事が遅い人に対して、正面切って「仕事が遅いですよ」と言う人は殆どいない。傍目には頑張っているように見えるなら、尚更だ。

 キーボード入力のスピードが速くても、仕事そのものは遅い人は結構いる。慌しく動きまわって、仕事をした気になっている場合、意外と本人も気付かない。

 日々、自分の仕事の成果とプロセスを冷静に振り返り、改善点を洗い出し、次に活かす。地味ながら、結局はその習慣の有無が勝敗を決するのだと思う。

 山田宏哉記

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 2011.12.18 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ