ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3091)

 「上から目線」のあなたと私

 「上から目線」という言葉には、社会人になってから、ちょくちょくと耳にするようになった。しかも、僕の同世代の人が「それって、"上から目線"だよね」などと言っていた。

 学生時代は全くといいほど聞かなかった。僕自身、他人を「上から目線」などと評することもない。そんなことはどうでもいい。

 しかし、世の中には「上から目線」をやたらと気にする人がいるようだった。

 昨日、榎本博明(著)『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)を読んだところ、予てからの疑問が大分氷解した。随所に気付きと思い当たる節があり、非常に勉強になった。

 本書によると、日本人には「視線恐怖症」なる病が蔓延しているらしい。「他人からどう見られているか」を過度に気にする症状だ。「上から目線」に過剰反応するのは、どうやら「他人に見下されること」を極度に恐れる人たちのようだ。

 本書で特に面白かったエピソードは、仕事で失敗して落ち込んでいる社員に「気にするな。大したミスじゃない」と声を掛けたら、「勝ち誇ったように言いやがって!」と逆ギレされた、という話だ。

 他人の視線に過剰反応する。それが「上から目線」と密接に繋がっていることがわかった。

 一方で、本当に他人を見下すことで、自分の優位性を証明しようとする人もいる。そういう偉ぶる努力をすること自体、小物の証明に他ならないし、実力がないことを一番わかっているのは本人のはずだ。偉そうに振舞う人は、必ず何らかの劣等感を抱えている。

 時々、僕の言動を「上から目線」と評する人がいた。彼らは決まって、仕事の本質部分を理解せず、細かい入社年次や言葉尻ばかり問題にし、パフォーマンスが低かった。彼らの常識に照らすと、目下の者が目上の者に意見するのは「謙虚さが足りない」ことのようだった。

 たぶん「山田に見下されている」という思いに駆られたのだろう。勝手な被害者意識だが、仕事に対する理解の深さとバリューの高いアウトプットに関しては、僕はかなり早い段階から内心、自分に自信を持っていた。

 僕は相手の地位や肩書きによって、態度や言葉遣いを意識的には変えていない(但し、相手の仕事の実績に応じて、敬意の払い方は当然違ってくる)。率直に言って、バカな先輩が威張るような体育会系文化は嫌いだ。

 それで、実力が伴わないのに高いポジションについている人からは「上から目線」ように見えたのかもしれない。それは、彼ら自身の劣等感の裏返しだったのだと思う。

 前掲書の通り、「上から目線」の核心は、日本人の「視線恐怖症」にある。要するに「他人から冷たい目で見られるのが怖い」。これは「友達がいないと思われるのが嫌だから、トイレで食事する」という大学生の話にもつながる。

 でも、この際ハッキリ言わせて貰おう。こんなつまらないことに神経を尖らせているから、価値の高い仕事ができないのだ。

 山田宏哉記

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 2011.12.30 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ