ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3097

 プロフェッショナルは"努力"しない

 現実には、人生で大切なことほど、努力が通用しない。

 日本人は割と"努力"という言葉が好きで、「真面目にコツコツと努力する」という姿勢を高く評価する。僕も、学生時代は真面目にコツコツと努力していたような気がする。しかし、ビジネスの世界に入り、そういう姿勢は根本的に間違っていると気付かされた。

 結論から言うと、プロフェッショナルは"努力"をしない。

 もちろん、勝つための戦略を立て、課題を見極め、課題解決を完遂し、反省と改善はする。しかし、漠然と"努力"したりはしない。

 ビジネスの世界では、個人としてのキャリアを築く上でも、組織に貢献する上でも「まず、戦略ありき」だ。まず、この戦略の精度を高めることに、全力を尽くすべきで、そのためには組織内外の様々な情報を収集し、分析することが必要になる。

 また、プロのビジネスパーソンが責任を負うべきは、「何が解決すべき課題か」を見極め、「課題解決を完遂すること」に他ならない。当然だが、この問題解決の価値が、自分の報酬を上回ることが絶対条件だ。

 プロのビジネスパーソンならば、まず会社方針と部門方針を踏まえた上で、解決すべき課題を洗い出す。

 課題のうち、自分の力が及ぶ範囲のものと、及ばない範囲のものを振り分ける。更に、損益への貢献度によって、重要度と緊急度を振り分ける。

 そして、解決すべき課題に対して、解決への段取りを考える。複雑な問題であれば、考えただけでは解決しない。判断材料となる情報を収集することが必要になる。上司や関係者の説得等が必要であれば、その対策も考えておく。

 尚、自ら課題設定をした段階で、上司から指示されるであろうことを極力包含し、解決策の精度は、上司の期待度と要求水準を上回っていることが望ましい。自分のペースで仕事を進めることができる。

 通常、付加価値の高い"解決すべき課題"は、同時並行で走ることになる。これをどれだけ上手くマネジメントできるかが、プロのビジネスパーソンにとって、最も大切な技能になる。

 こうして見ると、プロのビジネスパーソンにとっては、「何が解決すべき課題か」を見極め、「その解決策をどう実行に移すか」を考える段階で、実は勝負の大半が決してしまう。

 「真面目にコツコツ努力します」「自分なりに頑張します」。実はこれらは、負け犬の口癖なのだ。ただの自己満足でしかない。

 プロフェッショナルが責任を負うべきは、「結果」だけであって、一切の言い訳は許されない。

 「人生で大切なことほど、努力が通用しない」というのは、身も蓋もない現実だ。但し、あまり中高生には教えない方がいいことでもある。

 だからこそ、学校は最も努力が報われる場所になるよう制度設計されている。それでも、生徒たちは学校での色恋沙汰やイジメを通して「大切なことほど、努力が通用しない」と身をもって学んでいく。

 ビジネスや男女関係は「頑張った者が報われる」ほど、甘い世界ではない。また、地頭や素質の良さをアピールするためには、仮に努力していても、努力したことは隠した方が良い。

 僕は「頑張っているね」と褒められても、実はそれほど嬉しくはない。なぜなら、それは仕事の価値とは関係ないからだ。嬉しいのはあくまで「結果を出しているね」という言葉だ。

 何度でも繰り返し言うが、人生で大切なことほど、努力が通用しないものだ。それは理不尽なことだろうか。

 僕はそうは思わない。だからこそ、人は精神が成熟し、他者に寛容になることができるからだ。

 山田宏哉記

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