ジョン・スミスへの手紙
 サイバー・ラボ・ノート (3099)

 社員とアルバイトは何が違うのか

 社員の仕事とアルバイトの仕事は何が違うのか。「賃金格差」みたいなことはよく話題になる。但し、仕事の中身の違いが身体的にわかるようになったのは、結構、最近のことだ。

 学生時代、僕は掃除屋でアルバイトをしていた。仲間だったSさんが「アルバイトだと月に20万円稼ぐのが限界だよ」とぼやいていた。当時、Sさんは、アルバイトを3つ掛け持ちし、毎日、3時間睡眠で駆けずり回っていた。

 僕にはSさんのような壮絶な生活は無理だと思ったし、きっと今でもできないだろう。単純計算すると、Sさんの年収は毎月20万円×12ヶ月=240万円になる。

 Sさんが壮絶な生活をして手にした年収240万円。この金額を思うと「社員とアルバイトの仕事は何が違うのか」とつい考えてしまう。

 「アルバイトが簡単な仕事をして、社員は複雑で難しい仕事をしている」というのは、たぶん現実に即していない。だからこそ、アルバイトの人から「社員と同じ仕事をしているのに、報酬が違うのはおかしい」という声が出るのだと思う。

 僕自身の経験を振り返ってみても、アルバイトとしてやった仕事が簡単ということはなかった。大型書店のレジでの接客は、あまりに複雑で2週間で挫折して辞めた。日雇い派遣の現場では、体力の限界を超えるような仕事もあった。

 社員と言っても、傍目には、アルバイトと同じことをやっているように見えることもある。また、新入社員などは、アルバイトに毛が生えた程度の存在だろう。それでも、社員として数年も働けば、アルバイトの仕事との違いは何となくわかると思う。

 社員の仕事がアルバイトと違うのは、社員は否応なしに「事業の損益と顧客満足に責任を負う」という点だ。そのために勤務時間以外も、仕事のために情報収集や勉強をしたり、仕事のことを考える必要性に迫られる。

 居酒屋の呼び込みを社員がやるケースとアルバイトがやるケースを考えてみよう。極端な話、アルバイト店員にとっては、別にお客さんを店に呼び込まなくても構わない。言い訳も許される。店が潰れても、他のアルバイトを探せばいい。

 対照的に、正社員が居酒屋の呼び込みをやる場合、こちらは絶対に結果を出さなければならない。路頭に迷うことになる。戦略を立てたり、キャンペーンを企画したりすることも必要になるだろう。要するにアルバイトとは、かかる重圧が全く違う。

 アルバイトから見ると、同じ「居酒屋の呼び込み」という仕事をしているのに、正社員の方がアルバイトよりも給料が高いのは不公平と感じるだろう。でも、同じことをやっているように見えても、重圧や戦う相手が全く違うのだ。こういうことは、とても多い。

 求められる仕事の進め方も違う。アルバイトはマニュアルに従い、指示者に言われたことをするのが基本。一方、社員は組織に貢献するため、何をすべきかを自ら決断し、調整を付け、課題解決を完遂するのが基本。

 もっとも、これはポジションの話で、現実にはそうではない人も多い。

 アルバイトから社員に登用されることを目指すとしたら、その戦略は、社員の目線で仕事をすることだろう。だから、「言われたことをする」のではなく、「組織への貢献と顧客満足」を仕事の目的に据える。そして、そのための企画提案を臆さずにやることだ。

 社員とアルバイトでは、仕事の進め方がかなり違うので、学生時代にアルバイトをするのは、必ずしも役には立たない。むしろ「言われたことをやるのが仕事」といったアルバイト固有の癖を身につけないよう、気を付けた方が良い。

 「与えられた作業を上手にこなす」のは、アルバイトの仕事のやり方だ。これで年収300万円以上を貰うのは、やはり虫が良すぎるのだろう。

 社員の仕事とアルバイトの仕事は何が違うのか。これをよく考えることは、付加価値の高い仕事をするための良い補助線になると思う。

 山田宏哉記

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 2012.1.10 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ