ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3103)

 期待外れの人材論

 僕は「期待外れ」の人材だった。だからこそ、懲罰を受けて、キャリアを棒に振ることになった。まずはこの点を、正直に認めておきたい。

 "敗因分析"は、調子がいい時にやっておかないと、陰鬱になって、逆にパフォーマンスが落ちてしまう。

 「"圧倒的成果"を出している」という自負がある今だからこそ、キチンと"敗因分析"をしておきたいと思う。

 仕事では、まずは「大量の単純作業をミスなくこなす」ことが必要だった。僕は今でこそ、致命的なミスをすることはめったにないが、新入社員の頃は、僕は結構、事務的なミスが多かった。

 なぜ、新人の頃、僕はミスが多かったのか。あるいは詰めが甘かったのか。それはたぶん「嫌々仕事をやっていたから」だと思う。もっとオブラートに包んだ言い方をすれば、「義務感で仕事をしていたから」だろう。

 なぜ僕は新人の頃、仕事を好きになれなかったのか。それはたぶん、全体像を把握しておらず、断片的なことをしていたために、仕事に「意味」や「目的」を見出せなかったからだ。

 振り返れば、意味はあったのだが、渦中にいる時はそれがわからなかった。

 「意味や目的なんて考えず、上に言われたことをやればいい」という仕事のスタイルは、端的に言って、間違っている。

 例えば、顧客に対する請求金額を間違えるのと、社内資料の図表で罫線をひき忘れるのでは、ミスの重みが全く違う。仕事のできない人は、このジャッジが甘くて、「どのミスも許されない」みたいな建前を言う。確認は注意力を傾斜配分してやるべきなのだ。

 仕事の全体像を把握し、自分のやっていることの意味がわかるようになれば、どんな仕事であれ、一気に面白くなる。ただ、それまでには、おそらく最低数年の時間がかかるし、上司や先輩が仕事の全体像や意味を教えるのに熱心でないと、更に時間がかかるだろう。

 数年経ち、僕も仕事で圧倒的な成果を出せるようになった。

 それまで待ってもらえれば良かったのだが、そこまで待っては貰えなかった。もっとも、企業経営の現場は厳しいので、これが普通だと思う。

 それでも、上司に見識があり、長期的な視点に基づいて部下の指導をしている光景を目にすると、僕はなぜか泣きたくなってしまう。

 僕は今では、上司が部下に対してなすべき指導は「仕事の全体像と意味を教えること」だと思っている。部下が意欲的に仕事に取り組むために最も必要なのはこの部分だ。「部下を飲みに連れていく」みたいな話は、基本的には仕事とは関係ない。

 結局のところ、僕の敗因は「短期的なパフォーマンスが悪かった」という点だ。

 「山田君って、本当に上司に恵まれないな」。キャリアを棒に振ったとき、あるベテランの先輩にはそう慰められた。「そんなことはありません」と僕は答えた。

 自分では、仕事(事業)の全体像と目的を把握すれば、圧倒的な成果が出せるようになることはわかっていた。事実、その通りになった。

 但し、そのためには数年の実務経験がどうしても必要だったし、それを関係者に理解して貰うことができなかったのは、ひとえに僕の力不足が原因だろう。

 しかも、僕はどこかでそれを「わかってもらえる」と期待していた。甘えがあった。結局のところ、僕が馬鹿で世間知らずの「期待外れの人材」だっただけの話なのだ。

山田宏哉記

【関連記事】
キャリアを棒に振った"何でも屋"(2012.1.18)
"努力は報われる"という信仰(2012.1.15)
人員削減に貢献できる"何でも屋"(2012.1.14)
社員とアルバイトは何が違うのか(2012.1.13)
プロフェッショナルは"努力"しない(2012.1.9)
怨念としての職務給・成果主義・雇用流動化(2012.1.7)
実務家からみた"学校教育の本質"(2012.1.3)
「キャリアの試練」を振り返る(2012.1.2)
プレイボーイはビジネスの強者か?(2012.1.1)
「上から目線」のあなたと私(2011.12.31)
「誰にも相手にされない"あの人"」との距離の取り方(2011.12.25)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)
有償サービスに求められるのは「体験」である(2011.12.24)
なぜ、あの人は仕事が遅いのか(2011.12.23)
"就活イベント"のビジネスモデル(2011.12.18)
なぜ、あの人は"お荷物"なのか(2011.12.16)
目の前にある仕事論(2011.12.15)
「強さ、鋭さ、温かさ」のキャリア戦略(2011.12.12)
"消えない汚点"を抱いて生きる(2011.12.10)
「強さ、鋭さ、温かさ」の人材論(2011.12.7)
藤本篤志(著)『社畜のススメ』覚書(2011.11.28)
"コミュニケーション能力"の落とし穴(2011.11.27)
長時間労働の落とし穴(2011.11.23)
"前例踏襲"に立ち向かい、"実績"をつくる(2011.11.19)
辛さを美化する愚(2011.11.16)
制約の中の決断(2011.11.13)
山本直人(著)『電通とリクルート』覚書(2011.11.6)
認められる努力は無駄である(2011.11.3)
なぜ、あのマネジャーは部下を潰すのか(2011.11.3)
"顧客への貢献"か、"長幼の序"か(2011.10.29)
評価という試練(2011.10.18)
人間固有の能力、動物としての強さ(2011.10.16)
瀧本哲史(著)『武器としての決断思考』覚書(2011.10.15)
増田不三雄(著)『社内失業』覚書(2011.10.9)
瀧本哲史(著)『僕は君たちに武器を配りたい』覚書(2011.10.5)
会社に頼ること、頼らないこと(2011.9.27)
成果主義と能力主義は違う(2011.9.25)
仕事を作る側、作業をこなす側(2011.9.19)
情報共有の落とし穴(2011.9.6)
なぜ、カリスマ・リーダーは人を育てられないのか(2011.9.4)
日本企業で働く希望 (2011.8.29)
なぜ、真面目な人は成果を出せないのか(2011.7.25)
安宅和人(著)『イシューからはじめよ』覚書(2011.1.1)



2012.1.21 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ