ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3106)

 "教え合える仕組み"をどう作るか  

 松本順市(著)『「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる』(幻冬舎新書)を読了した。その中に「教え合える組織は生産性が高い」という趣旨の指摘があり、ハッとさせられた。

 "振込み詐欺"のグループの組織構造には、顕著な特徴があるという。全体を統括する指示者以外のメンバーは、互いに何をやっているか知らないことだ。

 これにはもちろん理由がある。犯罪に手を染めている以上、メンバーのうち誰かが逮捕されるリスクがある。その時重要なのは、逮捕されたメンバーが吐いた情報を元に、他のメンバーに警察の手が及ばないことだ。

 そのため、犯行の指示者と実行犯は1対1でタテの関係でつながり、実行犯同士が情報を共有することはない。

 翻って、ビジネスの現場はどうだろうか。

 案外、"振込み詐欺"のグループと同じようなスタイルで仕事をしていることが多いことに気付く人も多いのではないだろうか。

 上司と部下が1対1でタテの関係でつながり、部下同士のヨコの情報共有が不足している。部署を超えたヨコのつながりとなれば、尚更だ。

 極端な言い方をすると、直属の上司から指示を受けた仕事だけをやり、その成果を直属の上司だけに報告する。

 隣の人が何をやっているかについては関知しないし、困っていても助けない。効率的な仕事のやり方を見つけても、わざわざそれを他人には教えない。「そんなことをしても何の得にもならない」と考える。

 人は他人に物事を教えるとき、多くのことを学ぶ。誰しも体験的に気付いているだろう。だからこそ、「教え合える職場」の生産性が高くなるのは、当たり前のことだ。

 僕は仲間と共にこの「教え合える仕組み作り」に肩入れしている。これは「チームとして仕事をする」際の土台となる部分だ。

 仲間と"場作り"のイベントを企画運営することもあれば、僕自身が個人的に率先垂範してやっていることもある。

 そのために「なぜ、同じ時間と空間を共有する必要があるのか」という問に対する理論武装をしたりもしている。

 ひとつ言えるのは、これは非常に重要度と難易度の高い課題だということだ。人間の感情も密接に関わってくるので、一筋縄ではいかないし、時間もかかる。

 それでも、"実務に即したコミュニケーション"を促進する取り組みを続けるうちに、徐々に一定の成果が出るようになってきた。

 何も華麗な妙案があるわけでもなく、実は細かい働きかけを継続的にするのが結局、一番効率的だったりする。

 何事も、言うのは容易いが、実際にやるのは難しい。だからこそ、世の中には寝言のような建前が溢れている。

 「教え合える仕組み作り」もまた、軽く聞き流してしまいそうなテーマだが、いつだって現場は大変なのだ。

山田宏哉記

【関連記事】
マイケル・サンデル(著)『これからの「正義」の話をしよう』覚書(2012.1.21)
期待外れの人材論(2012.1.21)
キャリアを棒に振った"何でも屋"(2012.1.18)
"努力は報われる"という信仰(2012.1.15)
人員削減に貢献できる"何でも屋"(2012.1.14)
社員とアルバイトは何が違うのか(2012.1.13)
プロフェッショナルは"努力"しない(2012.1.9)
怨念としての職務給・成果主義・雇用流動化(2012.1.7)
実務家からみた"学校教育の本質"(2012.1.3)
「キャリアの試練」を振り返る(2012.1.2)
プレイボーイはビジネスの強者か?(2012.1.1)
「上から目線」のあなたと私(2011.12.31)
「誰にも相手にされない"あの人"」との距離の取り方(2011.12.25)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)
有償サービスに求められるのは「体験」である(2011.12.24)
なぜ、あの人は仕事が遅いのか(2011.12.23)
"就活イベント"のビジネスモデル(2011.12.18)
なぜ、あの人は"お荷物"なのか(2011.12.16)
目の前にある仕事論(2011.12.15)
「強さ、鋭さ、温かさ」のキャリア戦略(2011.12.12)
"消えない汚点"を抱いて生きる(2011.12.10)
「強さ、鋭さ、温かさ」の人材論(2011.12.7)
藤本篤志(著)『社畜のススメ』覚書(2011.11.28)
"コミュニケーション能力"の落とし穴(2011.11.27)
長時間労働の落とし穴(2011.11.23)
"前例踏襲"に立ち向かい、"実績"をつくる(2011.11.19)
辛さを美化する愚(2011.11.16)
制約の中の決断(2011.11.13)
山本直人(著)『電通とリクルート』覚書(2011.11.6)
認められる努力は無駄である(2011.11.3)
なぜ、あのマネジャーは部下を潰すのか(2011.11.3)
"顧客への貢献"か、"長幼の序"か(2011.10.29)
評価という試練(2011.10.18)
人間固有の能力、動物としての強さ(2011.10.16)
瀧本哲史(著)『武器としての決断思考』覚書(2011.10.15)
増田不三雄(著)『社内失業』覚書(2011.10.9)
瀧本哲史(著)『僕は君たちに武器を配りたい』覚書(2011.10.5)
会社に頼ること、頼らないこと(2011.9.27)
成果主義と能力主義は違う(2011.9.25)
仕事を作る側、作業をこなす側(2011.9.19)
情報共有の落とし穴(2011.9.6)
なぜ、カリスマ・リーダーは人を育てられないのか(2011.9.4)
日本企業で働く希望 (2011.8.29)
なぜ、真面目な人は成果を出せないのか(2011.7.25)
安宅和人(著)『イシューからはじめよ』覚書(2011.1.1)



2012.1.21 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ