ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3111)

 仕事の基本は報・連・相か

 日本では、まことしなやかに「仕事の基本はホウレンソウ(報告・連絡・相談)」と言われたりする。

 これは本当だろうか。単に語呂がいいだけで、単に「仕事をする上ではコミュニケーションが大切です」と言っているだけではないだろうか。

 では、報告と連絡はどう違うのか。仕事の基本と呼ぶなら、まず両者の違いを明確にするべきだと思うが、おそらく説明できる人は殆どいないだろう。

 強いて定義するなら、報告とは「自分の職務に関する結果連絡」のことだ。だから、報告は連絡の範疇に含まれる。

 例えば、宣戦布告は"連絡"だが、"報告"ではない。関係者に爆撃の成果を伝達するのは、"報告"と呼ぶのが適切だが、"連絡"でも間違いではない。

 この一例を見ても、「仕事の基本は報・連・相」があまり練りこまれたフレーズではないことがわかる。

 せいぜい、新入社員やアルバイト向けにコミュニケーションの重要性を理解させる以上の意味は持たないだろう。

 では、本当のビジネスの基本を端的に表現するとどうなるか。大切なのはむしろこの部分だ。建前はともかく、僕の持論では、以下のようになる。

 非定型の案件であれば、仕事の基本は、「企画・提案・実行」。

 ルーティンワークならば、仕事の基本は、「実行・改善・仕組化」。

 ビジネス・コミュニケーションの基本は、「オーダー(依頼/作業指示)・レポート(結果報告)・インフォメーション(判断材料)」。

 一歩進んで、"稼げる人"になるための基本は、「速度、決断、責任」。

 報・連・相はビジネスの基本というより、むしろ「日本における処世術(人間関係)の基本」と言うべきだろう。関係者と相談をすれば、失敗の際の結果責任を不明瞭にすることができる。

 強いて言うなら、報・連・相はマニュアルレイバー(単純労働者)にとっての「仕事の基本」だろう。確かにオペレーターにとっては「わからないことがあったら、上司に確認する」は基本動作と言える。

 しかしもはや、それだけで許される時代状況ではないだろう。競争の激化によって、企業が"稼げない人"の面倒をみるのは、だんだん難しくなってきている。

 おそらく今後、日本企業は新興国の企業に連戦連敗を重ね、強烈な人員削減と人件費圧縮の圧力にさらされることになる。定型業務はどんどんアウトソーシングの対象になるだろう。

 そんな時代に活躍するためには、"稼げる人"になるのが必須条件だと僕は思う。

 先日、僕は自分で企画提案した案件を完遂し、一定の評価を頂くことができた。仲間からは「地に足の着いた身近な改善」との評をいただいた。これはとても嬉しかった。

 改めて考えると、アイディアは持っているものの、結局は"誰か"に期待しているだけの人が多いような気がする。気付いたことを、あくまで自分の問題として受け止め、自分の決断と責任で成し遂げる。決定的に差が付くのはこの部分だ。

 いずれにせよ、「仕事の基本は報・連・相」は、「仕事をする上ではコミュニケーションが大切です」程度の意味で、単なる語呂合わせの域を出るものではないと思う。

 山田宏哉記

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