ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3114)

 時を告げる人、時計を作る人

 ビジネス上の成果には、ストック(蓄積)型とフロー(流動)型がある。

 高い成果を狙うなら、ストック型の成果を狙うのが大原則だ。その方が組織への貢献度も高くなる。

 比喩として言うならば、"現在の時刻を伝達して回る人"になるのではなく、"時計を作る人"になることが必要だ。

 それでは現代のビジネスにおいて、"時計を作る人"とはどのような人物なのか。

 例として、PCサポートのコールセンターの業務を考えてみたい。

 そもそも、コールセンターで働く人にとっては、何をもって「成果」と言えるだろうか。

 例えば「言葉遣いが丁寧で、お客さんに好印象を与えた」とか「お客さんからの問い合わせに迅速に対応した」などは「成果」と呼べるだろうか。確かにそれは必要な要素であるには違いない。

 しかし、ビジネスの視点から見ると、これだけでは物足りない。

 それでは「一定時間内に、より多くの問合せに回答すること」が「成果」だろうか。平均処理速度が毎時10件なら、毎時30件で処理する人が「圧倒的な成果を出す人」だろうか。

 これも違う。

 「圧倒的な成果を出す人」は、「目の前の対応」と並行して、組織運営のあり方を抜本的に見直して、次々と改善施策を打つものだ。

 例えば、コールセンター業務の目的は何か。スタッフの人員数は適正か。スタッフは何を基準に仕事をしているか。よくある問合せは何か。

 スタッフがマニュアルを元に仕事をしているなら、マニュアルの記載内容を精査し、改善する。よくある質問に関しては、FAQとしてまとめて、ウェブ等に掲載する。これらが"時計作り"に相当する具体例の部分だ。

 ストック(蓄積)型の成果とは例えば「FAQや対応マニュアルの充実」に相当し、フロー(流動)型の成果とは「問い合わせに対する迅速かつ丁寧な対応」になる。

 ストック型の成果の特徴は「一度作れば、後はあまり手間をかけずに運用でき、高い効果を発揮する」。ウェブに掲載する記事などは、その代表的なものだ。

 ストック型の成果とウェブは非常に相性がいい。しかも、ウェブは非常にローコストで運用が可能な上、影響力が強い。利用しない手はない。

 ついでに言うと、FAQには目的外の利用法がある。人の入れ替わりが多いところであれば、本来はお客様向けに作ったFAQをスタッフの教材としても使うことができる。

 FAQは「オーソライズされた問合せ回答例」なので、FAQが充実していると、新入りのスタッフにとってもこれを参照しながら対応すればいいので、安心できる。「働きやすい職場」をつくるためにも、こういう細かい部分の積み重ねが大切だ。

 このように目的外にも活用できるのが、ストック型の成果の特徴だ。

 時を告げるのか、時計を作るのか。ストック型の成果を狙うのか、フロー型の成果を狙うのか。

 前者が海外の人件費が安い国々の労働力に代替されていく以上、答えは自ずと明らかだろう。

 山田宏哉記

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