ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3118)

 なぜ、あの人は自分を誇示するのか 

 「自分が話題の中心にならないと気が済まない人」がいる。

 話題が当人からズレると途端に不機嫌になるので、周囲の人は余計な気を使わねばならず、大変だ。更に厄介なのは、大抵、本人にはこの自覚がないことだ。

 英語にはprove oneselfというフレーズがあるようだ。

 自分を証明する。こなれた日本語にすると、「自分が一角の人物であることを他人に誇示する」。

 日常生活でも、ウェブでも、prove oneself(自分が一角の人物であることを他人に誇示すること)に夢中になっている人がいる。残念ながら、僕もやっている。

 これは弱い人間に特徴的な言動だ。

 一般論として言えば、自己顕示欲(「一角の人物であることを誇示したい」という気持ち)は、承認欲求(「認められたい」「評価されたい」という気持ち)が満たされないから生じる。

 なぜ、承認欲求が満たされないのか。社会から「無条件の承認」が消えつつあるからだろう。「成績が良いから褒められる」「実績があるから認められる」といった条件付きの承認だけでは、「無能な人」の居場所がなくなってしまう。

 自己顕示あるいはprove oneselfの必要性を感じる状況というのは、客観的に見るとかなり形勢が悪い。それは他人から軽んじられた反動である場合が多い。そして、自己顕示欲の針が振り切れると、大型トラックで秋葉原に突撃することになる。

 僕もそうだった。僕は、社会人になって丸4年間を無駄にしてしまった。

 僕は社会人として最初の3年、職務経歴書に書けるレベルの実績(組織または損益への貢献度が大きい決断と実行)が全くない。

 そのため、社会人4年目は「過去の汚点」を払拭するだけで精一杯だった。それでようやく、スタートラインに立つことができた実感がある。

 この間、僕は自分を誇示しなければならなかった。いつも「自分の実力はこんなものじゃない」と思っていた。自己顕示欲が過剰だった。

 しかし、不遇の時に、自分を大きく見せようとするのは、かえって逆効果であることが多い。

 社会人になって3年。1日16時間を仕事と勉強に投じて、実績ゼロ。さすがに、これはショックだった。自分の能力の低さを呪いたくなったものだ。

 しかし、残念ながら、これが僕の実力だった。そして、このことを正面から受け入れることでしか、僕は再起のキッカケをつかむことができなかった。

 山田宏哉記

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