ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3120)

 不遇の日々も三年 

 佐々木常夫(著)『働く君に贈る25の言葉』(WAVE出版)を読了した。逆境を引き受ける。不遇なポジションで自分を鍛える。「それでもなお」を積み重ねる。著者の実体験の重みから生まれているのがわかり、沁みるものがあった。

 「会社に長く勤めて、多くの人を見てくればわかることです。誰が伸びるのか、誰が伸び悩むか。伸びるのは、日陰の部署で、気持ちを腐らせずにがんばってきた人に多い」(P167)のように言われると、僕自身、身が引き締まる思いがする。

 ふと思い出すことがある。社会人になって3年間、僕の仕事上の実績はゼロだった。

 言い訳はしない。僕が無能だった。それだけの話だ。

 もっとも、努力しなかったわけではなかった。

 仕事と勉強に、1日16時間を投資した。早く仕事ができるようになりたくて、休日も関係なくこれを繰り返した。

 しかし、僕は実績を出すことができず、低い評価しか得られなかった。途中、無理をし過ぎて、死にかけて入院した。

 ビジネスである以上、3年間、全く実績を出せなかったスタッフには、相応の処分が待っている。これも当たり前の話だ。

 僕は、馬鹿にされ、罵倒された挙句、実質的に職場から追い出された。

 社会人になって4年目、僕は随分とマイナスの地点からやり直すことになった。

 ゴミの廃棄処分のように、普通はジャンケンに負けた人がやることを、専門でやることになった。なぜなら、「山田はデスクワークを任せられないほど無能」だったからだ。結局僕は、ホワイトカラーの職場でゴミ捨てに類することばかりやることになった。

 「悔しくなかった」と言ったら、嘘になる。

 社会人になって3年間、1日16時間を仕事と勉強に投資し、能力にも自信があった。大学時代は、毎月50〜100冊の本を読んで、必死で勉強していた。

 「その挙句が、これか」と思うと、いつも失意に潰されそうだった。

 但し、どのような仕事であれ、手を抜くことはなかった。どのような仕事であれ、その中にやりがいやおもしろさを見出すようにした。

 おそらく僕は、「ゴミの廃棄処分」に詳しい部類に入ると思う。今ではこれは、僕の誇りだ。

 そして、気が付けば僕は、圧倒的な成果を出し、高い評価を得るようになっていた。不遇時代を脱して後の1年間の実績は、それ以前の3年間の成果を遥かに上回る。

 社会人として決定的に重要な最初の3年を無駄に過ごしてしまったのは、残念だ。しかし、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。

 そして、不遇の日々も、いつまでも続くわけではない。僕の場合も3年だった。「石の上にも3年」という格言は、案外、的を射ているかもしれない。

 いずれにせよ、僕は佐々木氏の著書を、全て読むことに決めた。

 山田宏哉記

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