ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3121)

 "負けた理由"よりも"勝つ必然性" 

 一般には勝負に負けた際、キチンと「敗因分析」をすることが大切だと言われる。建前では、僕もそう言う。

 但し、本音レベルでは、僕は敗因分析はあまりしない方がいいと思っている。むしろ、「敗因分析は有害ですらある」というのが、僕の考えだ。

 これは僕の実経験に基づいている。

 仕事で成果を出せなかった頃、僕はよく"敗因分析"をしていた。「なぜ、上手くいかなかったのか」とか「なぜ、成果を出せなかったのか」といった理由を探り、その対策も考えた。一見、まともなことをしていたが、これは無駄だった。

 僕が負けた理由はいくらでもある。「体力不足」「勉強不足」「注意力散漫」「人格障害」等、挙げれば切りがない。後天的に克服できるかも、よくわからない。負ける理由はたくさんある。

 敗北した格闘家が「防御の技術と打たれ強さが足りなかった」と自己分析するのは間違ってはいない。その対策として、必死でガードの練習をするのも、理屈では間違ってはいない。間違ってはいないが、彼はきっと次も負けるだろう。

 別に負けた理由を克服しなくても、勝つことはできる。

 後に気付いたことだが、仕事には"勝ちパターン"がある。

 もちろん、業務特性や個人の気性などによって"勝ちパターン"は違ってくるが、仕事ができる人は例外なく、自分なりの"勝ちパターン"を持っているものだ。

 実践的な話をすると、仕事は「自分の"勝ちパターン"」に持ち込めば、大抵、上手くいくものだし、成果も出せるものだ。

 成果を出すためにビジネスパーソンが注力すべきは、幾種類もの"勝ちパターン"を身体で覚えることと、状況や案件を自分の"勝ちパターン"に持ち込む技能を磨くことなのだ。

 僕自身のことで言えば、僕は言語化しにくい事柄を言語化したり、理解しやすい文章を書くのが得意だ。実務レベルに落とすと、例えば議事録を書いたり、FAQや案内資料やマニュアルを作ったり、ウェブのコンテンツ全般を運用管理するのには強い。

 これらの分野においては、僕は一定のノウハウと"勝ちパターン"を持っている。そして、僕はなるべく「得意分野で貢献する」ことだけに集中したいと思っている。

 いまさら僕が「なぜ、上手く人前で喋れないのか」とか「なぜ、宴会の盛り上げ役ができないのか」とか"敗因分析"をしても、あまり意味がないと思うのだ。そういう仕事は、得意な人に任せればいい。

 もちろん、人前で話すのが上手な方が、下手なのより望ましいことは言うまでもない。宴会の盛り上げ役もそうだ。しかし、もともと完璧な人間などいないし、自分の得意分野に集中した方が、成果を出せることは間違いない。

 つまり、仕事を覚え始めた新人がまず注力すべきは、自分なりの"勝ちパターン"を身体に叩き込むことだ。そして、仕事や状況に応じて、どうすれば自分の"勝ちパターン"に持ち込むことができるか、そのノウハウを習得することだ。

 成果を出すためには、"負けた理由"よりも、"勝つ必然性"を追求するべきなのだ。

 特に弱者には、敗因分析など必要ない。そんなことをしても、現実には自信を喪失し、負け癖がついてしまうだけだ。

 むしろ、弱者に必要なのは「成功体験」と「勝因分析」だ。成功体験で自信をつけ、勝因を分析し、習慣化することではじめて、再現性のある成果を出せるようになる。

 人間は理屈通りには動かない。

 確かに、建前を言えば「キチンと敗因分析をし、教訓とすることが大切」だ。だが、現実には、敗因分析などしていると、萎縮して、ますますパフォーマンスが落ちてしまう方が普通なのだ。

 山田宏哉記

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2012.3.10 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ