ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3128)

 一撃決着のビジネスメール

 今更だが、ビジネスで遠隔地にいる人とコミュニケーションを取る場合、電話より電子メールが基本になりつつある。ビジネスメールをどれだけ活用できるかが、実務能力を決定付けると言っても過言ではない。

 テクノロジーは、ワンテンポ遅れてビジネスに浸透する。僕は「これからはソーシャルメディアとビッグデータの時代」みたいなことは言わない。これからは電子メールの時代である。

 その割には、ビジネスメールのリテラシー(読み書き能力)がある人は意外と少ないと感じる。「ビジネスメールのマナー」みたいなことは知っていても、人間の行動パターンを把握した上で、効果的なビジネスメールを書く人は少ない。

 以下、僕自身が経験的に効果を実感しているノウハウを紹介したい。これはあくまで本音と実態ベースの話だ。

 ビジネスメールにおいて、気をつけるべきは下記の2点だ。

1.案件が片付くまでに、相手とやり取りが必要な回数を極力減らすこと

2.1メールあたりの行数、字数を極力削ること

 項番1については、5往復のやり取りを1往復で済ませれば、単純計算でかかる時間は5分の1になる。そのためには「疑問の余地、誤解の余地がなく、情報密度が高い文章を書く」ことが決定的に重要になる。

 相手に決断を迫ったり、オーダー(作業指示)を出すなら、必要な情報は全て記載する必要がある。相手が疑問点を返信してきたら、その分時間のロスが生じる。

 仕事の速い遅いは、実はこういう部分で決まる。

 項番2について、まず知るべきは、メールを読むのに割く時間には自ずと限度があることだ。本音ベースでは、大抵、送信者と件名で開封するか否かを決め、開封しても最初の3行くらいを読んで、次のメールに移ると思う。

 自分への直接的な作業指示でない限り、1メールを読むのに要する時間は、たぶん3〜10秒程度だろう。

 相手に話を聞かせることはできるが、相手に強制的に文書を熟読させることはできない。熟読するか、読み飛ばすかは、読む側が決めることだ。

 従って、相手に対する直接的なオーダー以外の案件ならば、相手が3〜10秒で読んで理解できるメールにする必要がある。

 有効なビジネスメールを打つための基本は1要件3行以内。相手の名前と自分の名前で2行使うと、残りは1行だ。更に言うと、1行30字以上は読みにくい。

 従って、ビジネスメールの本文は30字以内で書くのが望ましい。

 例えば、「◯◯の件、作業完了。確認願います」なら計16文字。充分に1行で収まるし、コアメッセージも伝えられる。15秒で書けるし、3秒で読んで理解できる。このシンプルさが大切だ。

 仕事仲間に対しては、「お疲れ様です」「お世話になります」「よろしくお願いします」みたいな文言は極力落としたい。余計な言葉を連ねるほどに、コアメッセージの訴求力が落ちる。これをわかっていない人が意外と多い(但し、お礼と謝罪は省略してはいけない)。

 もちろん「短い行数、少ない字数」が美徳と言っても、説明不足になっては意味がない。1行30字以内で決着をつけられない案件の方が多いだろう。

 それでも、普段から「1行30字以内で決着を付ける」と心掛けることが大切だ。このような訓練を積むことで初めて、普通の人が10行400字で書くメールを2〜3行(60〜90字)で書けるようになるのだ。

 ツイッターの人気の秘密は「字数制限」にある点に留意して欲しい。

 普段から極力短い行数、少ない字数で情報密度の高いメールを書いていると、いざ詳細な説明を要するメールを書いて送った時も、「いつもと違う」ので相手に読んで貰うことができる。

 「あの人はメールを読まない」と言われる人は、どの組織にもいると思う。注意を要するのは、案外、その人は送信者でメールを読む、読まないと振り分けていて、「あなたのメールを読まない」だけかもしれない点だ。

 情報密度の低いメールを連発していると、そのうち相手が開封すらしなくなる。こうなったら全件、電話連絡が必要になり、更に相手から嫌われてしまう。

 建前としては「自分宛てに来たメールは、全件、キチンと熟読しましょう」というのが正しいのだろうが、現実はそうではない。僕たちが、面倒くさいので個人情報の取扱条項を適当に読み飛ばして、「同意する」のボタンをクリックするのと同じことだ。

 厳しいことを言うと、「メールを読まれない人」ほど、自分の言語表現能力を棚に上げ、「メールという媒体の問題」にすり替える傾向がある。

 まとめると、案件が片付くまでのやり取りのやり取りの回数を減らし、更に1メールあたりの行数と字数を極力削る。これが本音ベースのビジネスメール作法だ。

 山田宏哉記

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2012.4.29 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ