ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3130)

 性的リソースの分配論

 平和が実現した世界で、最も切実になる問題は何だろうか。

 それはおそらく、「性的リソースの分配」だろう。男女比がほぼ1対1の世界で、たぶん僕たちはまた、限られた性的リソースを求めて争いを始めてしまうと思う。

 ネットワーク理論が教えるところによると、人間においても性的リソースは一部のキーパーソンたちが寡占しているようだ。これは特に男性に顕著で、多数派の男性が色気のない生活を送っている一方、一部のキーパーソンたちは放埓な日々を送っている。

 現代日本においても、一夫一妻制が敷かれているが、あくまでこれは建前であることに誰しも気付いている。

 魅力的な一部の男性が、毎晩、違う女性を寵愛する一方、魅力度の低い男性はそのような機会には一切恵まれない。この局面では、人間はあまり他の動物と大差がない。

 但しこれは、公然と語られることは滅多にない。

 性的ネットワークが可視化できない最大の理由は、人間は「言っていることと、やっていることが違う」からだろう。セクシャルな質問に対して、正直に答える人は少ない。特に「◯◯さんと寝た」といった固有名詞入りの情報は、一気に生活を破綻させるリスクがある。

 実生活で時々話すのだが、人々はTwitterに何でも書き込んでいるように見える一方、セクシャルな行為の実況中継は注意深く避けている。ラブホテルは満室でも、それを連想させるようなツイートがTwitter上に溢れることはない。

 また、性的リソースは「有限の資源」なので、マネタイズの対象になる。娼婦は人類最古の職業でもある。下品な言い方になるが、性的リソースの分配は「カネの力」で一定の解決をすることが可能ではある。

 良い悪いは別として、お金に困った女性が性的リソースを提供するのは、世の常である。先天的に性的リソースの分配に恵まれない男性が、金銭で性的リソースを購入するのも世の常である。性的リソースには、需要と供給が常に存在するので、一定の取引価格が成立する。

 公権力が性的リソースの売買を完全に禁止すると、性犯罪の急増が予想される。ここは舵取りが難しいところで、現代日本では「売春は禁止だが、特殊浴場で自由恋愛をするのはOK」といった線引きをしている。

 日本の大人は、ここはあまり突っ込んではいけないと知っている。

 何かの本で読んだ記憶では、警察官も特殊浴場で自由恋愛をする。但し、彼らは自分の管轄外の区域まで遠出するのが不文律のようだ。これこそ、「職業的良心」と言うべきだろう。

 話を戻すと、「お金持ちがますますお金持ちになる」のと同様、性的リソースにおいても、「持つ者が更に多くを持つようになる」という法則が存在する。中学生の頃はドングリの背比べでも、その後の経験の質と量により、強者と弱者の差は決定的なものになる。

 勝手に想像すると、モテる人は「誰にどのようにアプローチを掛け、どのような展開に持ち込むか」という事前の想定が優れているのだと思う。この能力を磨くためには、実戦経験を積み、想定と現実のズレを修正する作業を繰り返すしかない。

 だからこそ、性的リソースの争奪戦においては、"実戦経験を積むこと"が決定的に重要なのだが、残念ながら、この機会そのものが既に公平でも平等でもない。この辺りはビジネスと共通するところだ。

 但し、現代においては弱肉強食の性的リソースの分配から疎外されても、情報機器が発達しているので、それほど「負け犬根性」を感じずに済む。

 世界中の各種動画(?)も見放題だし、学園青春系の恋愛ゲーム(?)も洗練されているようだ。いざとなれば逃げこむ場所がある。

 世の男性が、生身の女性ではなく、仮想的な性的リソースでも満足できるようになれば、案外、世界の平和は維持されるかもしれない。

山田宏哉記

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2012.5.1 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ