ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3132)

 ヤンキー文化圏の幸福な人生

 先日、岩盤浴の休憩中にある若者向けの雑誌を見たら、「成人式特集」をやっていた。新成人の顔写真が大量に掲載されていたのだが、男も女も、ヤンキー風の顔付きをした人ばかりが並んでいて、ゲンナリしてしまった。

 彼らの多くは、髪を染めたり、変な格好をしていたわけだが、もちろん僕は「金髪はケシカラン」とか「変な服を着るな」といった常識的なことが言いたいわけではない。僕が気になったのは、彼らがたるんだバカ顔になっていたことだ。

 造作の問題ではなく、彼らは面構えや表情が悪かった。

 まっとうな企業が採用面接をするなら、彼らは一発で「ご縁がありませんでした」となると思う。それは必ずしも、「金髪だから」とか「変な格好だから」といったマナーの問題ではない。彼らのバカ顔から、知的水準の低さと修羅場の経験の欠如が透けて見えてしまうからだ。

 それでも、彼らは何だか幸せそうだった。

 僕が「ヤンキー文化圏」の人たちと関わりがあったのは、主として中学時代のことだ。

 中学の頃、「ヤンキー文化圏」の生徒たちは徒党を組んでいた。彼らは学校の成績は悪かった。彼らの専らの関心は「不良仲間とつるむこと」であり、「異性と交遊すること」だった。

 嫌味に聞こえたら恐縮だが、僕は中学時代、学校の成績は学年で5番目くらいだった。それでも、公立中学だったので、ヤンキー文化圏の生徒たちとはクラスや部活で色々と絡むことになった。

 ヤンキー文化圏の男子グループと女子グループは、比較的仲が良かった。おそらく、お互いに「早くやりたい!」と思っていたからだろう。正直に言うと、彼らが女子グループと交遊しているのが、当時は羨ましかった。

 学芸会の演劇の練習の際、ヤンキー文化圏の男子が、ヤンキー女子に膝枕をしてもらっていることがあった。後にこれはPTAで問題になるのだが、当時、僕は単純にこれが羨ましかった。

 更に、彼らは若干、髪も染めていたのだが、生活指導の教師には「ドライヤーの影響です」と言い訳していた。

 林間学校や修学旅行の夜は、ヤンキー文化圏の生徒たちが大活躍だった。「A君とBちゃんがキスをしていた!」みたいな目撃談が流れてきて、学校秀才だった僕はヤキモキしたのだった。

 中学の頃は、学校秀才型の男子よりも、ヤンキー文化圏の男子たちの方が、女子からも人気があった。

 僕は高校は公立の進学校に進んだ。成績上位層が進学する高校だったため、ヤンキー文化圏の生徒たちとの交流は、高校進学を機になくなった。

 高校の頃、中学時代のヤンキー女子グループのひとりが、妊娠して出産したという話を聞いた。特に好きな人でもなく、個人的なショックはなかったが、何となく「あーぁ」と思ったものだ。

 中学時代のヤンキー文化圏の生徒たちは、その後、相応の人生を歩むことになった。派手な車を乗り回したり、女のヒモになったり、離婚したり。中学の頃は羨ましいと思ったものの、今となってはあまり羨ましくはなかった。

 結局のところ、「初体験を早く済ませた」とか「改造バイクを乗り回した」みたいなヤンキーの武勇伝は、どれだけ価値があるのだろう。今まで生きてきた結論では、殆ど価値がない。中学・高校時代は、学業と部活に専念した方が、後の人生で役に立つ。

 僕の観察では、中学時代はヤンキー文化圏の生徒の方が異性と交遊している。だが、学業と部活でのパフォーマンスが伸びるにつれ、徐々に学校秀才型の男子の方が徐々にヤンキー型男子を圧倒するようになる。就職後は、この差は更に決定的なものになる。

 ヤンキー文化圏の男女は、教育による技能向上が殆どないので、歳を取るにつれ、人材価値が落ちていく。従って、彼らにとっては、中学高校の段階で「初体験、妊娠、出産」までを果たし、世代交代を実現するのが合理的な戦略になる。

 日本社会に適応するための合理的な戦略は、中学・高校時代は、異性と遊ぶのはほどほどに抑えて学業に専念し、大学入学や就職を機に一気に舵を切り、「(コミュニケーション能力向上のために)異性と遊びまくる」というものだろう。おそらく、これが正しい。

 「学業重視」から「異性交遊重視」に舵を切る上でポイントになるのは、やはりタイミングだ。これは、早過ぎても、遅過ぎてもいけない。慎重かつ大胆に断行する必要がある。

 とはいえ、「ヤンキー文化圏で生きる」とさえ決意できれば、人生はシンプルになるかもしれない。

 改造したバイクや車をバカ面で乗り回し「高校時代の友達がバイク事故で死んだ」というありがちなエピソードでしんみりし、子どもには「夜露死苦」みたいな変な名前をつける。

 これはこれで案外、幸福な人生のあり方なのだと思う。

山田宏哉記

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2012.5.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ