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 高橋俊介(著)『21世紀のキャリア論』覚書

 高橋俊介(著)『21世紀のキャリア論―想定外変化と専門性細分化深化の時代のキャリア』(東洋経済) を読んだ。

 「想定外変化」というのは、本書を貫くキーワードで、僕も非常に重要だと思う。本書では、普遍性と専門性を並行して磨くべきという立場だが、これは日頃から意識したい。  

 リプレイス(置き換え)の時代だからこそ、キャリアの初期段階で「自分の専門はこれだ。これで一生飯を食う」などと決め付けるのは非常に危険だ。「想定外変化」によって、業界や職種もろとも淘汰されるリスクが高まっている。

 学生時代、日雇い労働で倉庫内の検品作業をやったことがあるが、当時は大量の人間を必要としていた。しかし、倉庫内作業をする電動ロボットが普及すれば、もはや単純作業をする大量の人間は必要ない。

 倉庫内作業は地理的制約を受けるので、グローバル競争には晒されない。だから、フォークリフトのオペレーターなどは、食えなくなることはないと考えていた。しかし、それは甘かった。電動ロボットとの競争が待っている。

 現時点での電動ロボットの性能をバカにしても意味がない。問題は、性能向上とコスト低減を成し遂げた「倉庫内無人システム」に勝てるかどうかだ。

 倉庫作業員にとっての電動ロボットのように、自分の力の及ばない範囲での環境変化によって、職を失うリスクが高まっている。分野によっては、専門スキルを磨くだけでは生き残れない。

 詳細な対応策は本書を参照していただきたいが、いずれにせよ「想定外変化」が起きた時、「無駄になる技能・知識」と「無駄にならない技能・知識」がある。

 履歴書に明示的に書ける資格などは「想定外変化」で一気に無駄になる。一方、普遍性の高い学習能力や集中力、対人能力や教養などは「想定外変化」でも無駄にならない。

 僕自身が心がけていることは「テーマに深入りし過ぎない。メソッドの専門性を追求する」ことだ。

 実務家としての僕のコアスキルは「文書作成・編集、データ解析、仮説検証」あたりにある。メソッドや手法が専門なので、比較的自由に、業種や職種の壁を超えることができる。

 「基礎的な原理・原則」を学ぶことの必要性は、従来以上に高まっている。表面的な物事ほど、「想定外変化」で一掃されてしまう。僕自身、現場に地に足をつけると同時に、「理論志向への転換」「教養の重視」が必要だと痛感している。

 個人的に共感したのは、エリートコースや花形部門に背を向け、「辺境に身を置く」ことの有効性だ。僕自身、前人未踏の「辺境」に身を置いているが、裁量の範囲が広く、とてもやりがいがある。

 いずれにしても本書は刺激的な良書で、キャリアを巡る重要テーマはほぼ網羅されていると思う。

山田宏哉記

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2012.5.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ