ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3138)

 辺境からの企画論

 社会人になって以来、「一気通貫で手がけたゼロベースの企画」のうち、「実績」と呼んでも恥ずかしくないものは、これまでに5件ある。

 あまり多くはない。ただ、僕は、職業的なコンサルタントではないし、企画部門のような花形部署にいるわけでもない。むしろ、前人未踏の"辺境"にいると言った方がいい。

 だから、予め断っておくと、僕がやっているのは「経営戦略に基づく新規事業開拓の企画」みたいに華やかで格好いいことではない。もっと泥臭くて、現場に足をつけたものだ。

 それを踏まえた上で「企画を立て、実行する上で何が大切なのか」について、改めて振り返ってみたい。

 まず、押さえるべきことがある。それは、企画は「立てる」ことより、「通す」ことの方が難しい、ということだ。

 自分の立てた企画が顧客に貢献するまでのあいだには、色々と手続きや調整が必要になる。この流れの想定をストーリーラインと呼ぶなら、ストーリーラインの優劣は組織人の実力差が露骨に出る部分だ。

 ストーリーラインには節目となるポイントがいくつかあって、最大の関門は「提案を通す」という部分だ。提案を通す前に作り込むのはリスクが高い一方、企画の完成度が低いとそもそも提案を通せない。

 絶妙な均衡点は、提案する相手の性格によっても変わる。こればかりは実務を通して掴むしかない。

 アイディアそのものを持っている人は結構いる。「どう決裁を取るか」という部分を練りこんで考えている人は少ない。結局のところ、企画を通して実施するのがプロの仕事であり、「あれは俺も考えていた」と言うのがアマチュアなのだ。

 僕はあまり「斬新な企画」を狙わない。「斬新な企画」は「通す」のが難しく、その割に得られる効果の予想も立てにくい。「斬新な企画」は時々やるトリックプレイとしては意味があるが、メインにはするべきではない。僕はそう考えている。

 私見では「ソーシャルメディアへの積極進出」みたいに叫んで仕事をした気になっている人は、きっと数年前は「これからはセカンドライフの時代」とか叫んでいたんだろうなぁ、と思う。結局のところ、「自分は最先端の人間です」とアピールしたいだけなのだと思う(ちっとも最先端ではないけど)。

 おそらく、企画や提案は関係者が「誰かがやるべきだと思っていた(が、今までやっていなかった)」と感じる位のラインが丁度いい。むしろ斬新さに欠ける企画の方が、提案を通しやすいし、実行効果もより高い精度で予測できる。

 但し、堅実な企画を回すばかりでは、仕事が単調になってしまう。だから、バランス感覚としては「堅実な企画を3本回す傍ら、エッジが効いた勝負企画を1本回す」くらいが良いのではないか。

 堅実な企画で実績を出していれば、仮に勝負企画で失敗してもダメージは最小限に抑えられる。

 ちなみに僕の場合、「圧倒的成果を生み出すアイディア」は、職場の外で生まれることが多い。具体的に言うと、サウナに入っている時や、カフェやファミレスで読書している時に閃くことが多い。

 正直言うと、「議論をすることで良いアイディアが生まれる」ことはあまりない。仕事の企画は、最初から最後まで、大抵、ひとりで考える。他人と議論するのは、アイディアをレビューにさらすことで、精度や品質を高めるためだ。

 もっとも、僕のやり方は、あまり正攻法ではないと思う。コンサルタントや企画職の人なら、ずっとスマートにやるだろう。

 これはあくまで「辺境からの企画論」に過ぎない。

山田宏哉記

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2012.5.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ