ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3140)

 最近の若者はバカばかり

 「最近の若者はバカばかり」という趣旨のコンテンツには、常に一定の需要がある。

 何故か。おそらく人間は「自分より下の世代はバカばかり」だと思いたいのだ。そうやって安心したい生き物なのだ。

 人間は少し油断すると「下の世代はバカばかり」という偏見に囚われてしまう。耄碌した中高年ほど「最近の若い者は…」などと寝言をほざく。

 そして選択的に「下の世代はバカばかり」という偏見に沿う情報ばかりを集めた挙句、「やっぱり、最近の若者はバカだ」と更に偏見を強化する。

 人間は、安心したい生き物だ。年下の人が上司になった時のように「下の世代に乗り越えられる」と精神的に大きなダメージを受ける。だから、下の世代の長所からは目を逸らし、下の世代の短所を針小棒大に取り上げる。そして、束の間の自己満足に浸るのだ。

 本来であれば、例えば「ゆとり世代だから、根性がない」などと、軽々しく言うべきではない。

 いつの時代であれ、優秀層は教育制度とは無関係に実力をつける。優秀層が重視する情報インフラは、以前よりも格段に充実している。僕は「下の世代の優秀層は以前より格段に優秀」だと考えている。

 振り返ると、これまで僕自身、上の世代の平均的なパフォーマーから、随分とダメ出しを受けてきた。「山田には長所が何もない」と言っている人もいた。致命的だったのは、彼らが年下の人間の悪口に興じていい気になって、「油断」したことだ。

 申し訳ないが、僕はその間に一気に実力と実績で彼らを抜き去った。

 下の世代に目を向ける時は、トップ層に目を向けるべきだ。自分が同世代の中でトップ層にいない限り、ごく近い将来、下の世代のトップ層と競合することになる。大抵の人は、ここで下の世代に敗れ去る。

 下の世代の悪口に興じるのは、気持ちがいいものだ。僕も油断すると、ついやりたくなる。「あいつは無能だ」と決め付けて悦に浸れば、精神的にも楽だ。でも、そんなことをしているうちに、年下に実力と実績で追い抜かれ、「勝負あり」となるのだ。

 そもそも「ライバルの短所をあげつらう」という行為そのものが非生産的だ。そのライバルが指摘を受けて短所を改善したら、どうするつもりなのか。形勢が不利になるだけだ。

 僕自身、他人から短所を指摘された場合、極力、改善するようにしている。一方、他人の短所は見えているけど、あまり指摘することはない。お礼の気持ちは、相手を実力と実績で追い抜くことで表現させていただいている。これが合理的な態度だと気付いた。

 実社会に出たら、本来、先輩も後輩も関係ない。実力と実績がすべてだ。どうすれば上の世代の平均的パフォーマーを追い抜き、下の世代には圧倒的な差をつけることができるか。各人が自力で考え抜くしかない。

 組織で働くのであれば、後輩とは「圧倒的な実力差」をつけなければならない。「後輩にギリギリ勝っている」程度の実力差では全然ダメだし、その程度の実力差で「後輩のあんなところがダメだ」などと偉ぶるのは論外だ。自分自身のことを心配せよ。

 年下に実力と実績で追い抜かれると、基本的に再逆転は不可能だ。大抵、年下の方が学習能力が高く、物覚えもいい。更に組織としても年下の方に重要な仕事とトレーニングの機会を与えることになる。

 自分自身が「年上の平均的パフォーマー」に勝ってきた人は、おそらく下の世代をバカにすることはないと思う。

 自分が上の世代を打ち倒してきたように、いつか自分も下の世代に打ち倒される。たぶんその日を予感しているはずだ。

山田宏哉記

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2012.5.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ