ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3143s)

 「結果が全て」の世界で生きる

 現代日本では「そこそこ働いて、そこそこの収入を得る」というのが、とても難しくなっている。これからは益々難しくなるだろう。

 今後、工場の無人化やアウトソーシングも更に進み、日本の工場で働く「作業員」も次々に不要となるだろう。愚直に働くだけで通用する職業は、マニュアルレイバー(単純労働者)として、年収2万ドルくらいに収斂していくのだと思う。

 このように時代の潮流に翻弄されるのが嫌なら、プロフェッショナルとして「結果が全ての世界」で生きることが必要になる。

 今更言うことでもないが、プロフェッショナルの世界は「結果が全て」だ。

 尤も、普通の日本企業では比較的、「努力が報われる」傾向にある。ここで油断すると、人材価値が落ち「その企業でしか通用しない人材」になってしまう。

 「勤勉」とか「愚直」が評価されるのは、工場の作業員のように、投下した労働量と成果に相関がある場合だ。「結果が全て」の世界では、この種の精神論がむしろ仇になることの方が多い。

 同じ企業にいても、「結果が全ての人」と「努力が報われる人」では、手掛ける仕事が全く違ってくる。ごく単純に言うと、「結果が全ての人」がゼロから仕事を生み出すことで、「努力が報われる人」の雇用を守るのだ。

 皮肉なことに、「努力を認めて欲しい」という人は「結果が全ての人」よりも努力をしない。「結果が全ての人」は成果を出すために、大抵、圧倒的な努力をするが、「努力を認めて欲しい」と言う人は、成果を出すことにこだわりがないので、むしろ自堕落に陥る。

 「努力を認めて欲しい」という人は大抵、勝負や本番に弱い。いざという場面で、集中力を発揮できないのからこそ、「努力を認めて欲しい」などと逃げる。

 例えば、農家が一生懸命農作物を作っても、天候の影響で枯れてしまうこともある。果たして僕たちは、農家の努力を評価して、その枯れた農作物(成果)を買うか。当然、買わない。プロフェッショナルの世界の仕事でも、これと全く同じことが言える。

 農作物を枯らした農家が「俺は毎朝早起きして畑の手入れをした。人並み以上に農業の勉強をした」などとアピールしても、全く意味がない。高品質の農作物を作れなかった以上、彼は無能なのだ。

 ただ、日本企業には温情があるので、大抵ここまで厳しい評価はしない。

 日本のビジネスシーンには「農作物を枯らした農家」が結構いる。彼らは「天候に恵まれなかった。動物に畑を食い荒らされた。これは不可抗力だ」などと言い訳を並べたて、枯れた農作物を仲間や顧客に売り付ける。

 温情主義の日本企業では「農作物を枯らした農家」であっても、「俺はこんなに勤勉で愚直に頑張った」とアピールすれば、おそらく生き残れると思う。しかし、プロフェッショナルの眼は誤魔化せない。そして「枯れた農作物を売る農家」は決定的に信用を失う。 

 「結果が全ての人」が農家をやるなら、気候の影響を受けにくいハウス栽培にするだろうし、動物が侵入してこないように柵も張るだろう。「努力を認めて欲しい人」は、努力さえすれば報われるので、ここまではしない。

 僕は、社会人になって丸3年間、「努力を認めて欲しい人」だった。

 社会人になって以来、僕は1日16時間を仕事と勉強に投下してきた。そうして丸3年間、必死で働いたつもりなのに、全く成果を出せなかった。それもあり、僕は濡れ衣を着せられてキャリアを棒に振ることになった。結果的にこれはとても良い経験だった。

 僕は社会人になっても尚、「努力が認められる」という甘えを持っていた。僕は、結果へのコミットメントから目を逸らし、努力や能力向上に逃げていた。

 キャリアを棒に振ってから、僕はゼロから再出発した。

 再起のために、僕は徹底的に結果にこだわるようになった。この姿勢は、震災ボランティアでの瓦礫撤去や側溝清掃を通して、より確固としたものになった。

 結果に徹底的にこだわるようになってからというもの、実務能力の向上が著しかった。 「成果を出さなければゴミ同然」なので、最後の詰めに至るまで、ベストを尽くすのが当たり前になる。「努力は認められる」みたいな寝言を言っていた頃は、もっと自分に甘かった。

 ただ、残念ながら、誰しも「結果が全て」の世界で戦うことはできないと思う。

 勤務時間に関係なく仕事のことを考え抜き、成果を出すために企画を練り、提案を通し、トラブルに見舞われながらも、強引にプロジェクトを完遂する。企画系の仕事は、「結果が全て」で、努力すれば報われるわけでもない。

 率直に言って、平均的な日本人の能力では難しいと思う。そしてたぶん、世の中の多くの人にとっては「愚直に汗水流して働けば、生計を立てられる場所」が必要なのだと思う。

山田宏哉記

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2012.5.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ