ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3146)

 あの人が嫌われる理由

 女性から「気持ち悪い」と陰口を叩かれている中年男性がいる。

 僕もよく「なぜ、彼は気持ち悪いのか」と考えるが、なかなか論理的な答えは見つからない。

 傍から見ると、彼は頑張っているように見える。下ネタを言うわけでもない。女性から「気持ち悪い」と言われる明確な理由は見当たらない。

 彼のことを「気持ち悪い」と評する女性の話に耳を傾けていると、どうやら気持ち悪いポイントは「ブツブツとひとり言を言う」とか「飲食の仕方が無作法」(水を「ゴキュゴキュ」と音を立てながら飲むとか)といった点にあるようだった。

 では、彼はその点を改めればいいのか。実は話はそう簡単ではないと思う。

 この話をツイッターに書いたところ、@riekonekonekoさんから以下のようなコメントをいただいた。

 "女性は一度「嫌い」と思ったら、些細な行動も「嫌い」になってしまうので、独り言とか飲食の仕方は後付けだと思いますよ。女性達もあまり正当性のない「嫌いな理由」を言うと自分の価値を引き下げてしまいかねないので本当の理由は言わないかもしれませんねー"

 "女性が「あの人なんだか気持ち悪い」という時は、侮蔑ではなく恐怖心ですよね。なにか相手に女性に対する攻撃的なものを感じてるのかも。風体が悪くても人畜無害の独身中年男性は、むしろ「かわいい」と言われていろんな年齢層の女性に世話してもらってるので。"

 なるほど、非常に勉強になる。確かに彼には得体が知れなくて、何をしでかすかわからないようなところはある。

 やはり、おそらく彼がひとり言をやめて飲食の作法を改めても、彼への評価は「気持ち悪い」のままだろう。酷な言い方になるが、多分「存在そのものが鬱陶しい」のであり、彼のやることがいちいち勘に触るのだと思う。

 人権意識が発達した世界では「存在そのものが気色悪い」などと言うのはルール違反だろう。それは本人の努力ではどうしようもないことだからだ。

 それでも、人は必ずしも相手の言動によって、好きになったり、嫌いになったりするわけではない。自分自身のことを振り返っても、「生理的に受け付けない」という相手は確かに多少はいる。

 結局、彼はどうすればいいのか。残念ながら、これといった決定打は見つからない。

 小手先のテクニックとしてできることは、なるべく他の人の視界に入らないように気をつけることくらいなのだ。何だか、とても気の毒になってしまう。

 人間は一目惚れをすることもあれば、全くその逆で、「存在そのものが気色悪い」と思うこともある。

 他人を好きになるのに、理由はいらない。同様に、他人を嫌いになるのにも、たぶん理由はいらないのだ。

山田宏哉記

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